9-103【国境の村にて女神は集う27】



◇国境の村にて女神は集う27◇


 銀の直槍は、破魔や浄化の力を持つ退魔の槍らしい。

 それを使って俺を倒そうとしているって事は……俺は悪魔かなんかか?

 どちらかといえば天使の種族なんですけどね、天上人は。


「――【シヴァ】……彼を消し去りなさい。そしてその強化された能力を回収するのよ!」


 ギャッ――!


「うおっ……伸び!んのかよ……!!」


 イエシアスの持つ【シヴァ】は蛇のように動き、不規則に軌道を変えて俺に迫る。

 イメージのシヴァは青い肌の美女なんですけど!?


 ギャギャギャギャ――!!


「【カラドボル】――ぐっ……!む、【無限むげん】!!」


 激痛が右手に走った。

 一度消えていた【カラドボルグ】は発動せず、俺は咄嗟に【無限むげん】で地面を操作した。

 やっぱり魔力消費のデカい能力は使えない……毒で最大値を減らされた魔力は、毒が消えても減った分は回復してないからだ。


 ならば、もとから消費の少ない上に、強化された【無限むげん】で!


「規則性のない操作ねぇ、蛇よ!彼を捕まえてっ!」


(捕まえ……そうか!)


 地面で立てた柱を縫うように、銀色の蛇は俺を追う。

 俺は【無限むげん】を更に追加で発動、立てた柱から伸びるように線を動かし、それを繋げる……八本の柱から伸び、繋がった様は……さながら迷路のように見える。


「くっ、と!おわっ……あぶっ!」


 操作する地面を器用に使って、俺は避けまくる。


「うふふ、逃げるだけなんて、覚醒(笑)はどうしたのかしらぁ?」


 わざとらしく(笑)かっこわらいをつけるな!あと口にするな!

 恥ずかしいだろうーが!


「うっせ!なら当ててみせろ!」


 兎のように飛び跳ね、作った迷路の壁を走り回る。

 攻撃は全てギリギリで回避し、行ったり来たりを繰り返して。


「ちょこまかと、っ……忌々しいっ!」


 右肩の痛み、それとここまでの戦いでの魔力の消費……それが鍵だ。

 【シヴァ】はどこまでも伸びる槍じゃない、魔力だ……なら、この迷路を縦横無尽に駆け回れば、少しの時間で途切れるはず。多分だけど!


「【極光きょっこう】……書き換え!――【無限むげん】!」


 両手に発生させた光を、【無限むげん】で操作する。

 新たに出来るようになった、物理操作以外の【無限むげん】の使い方……その振れ幅は、まさしく限界のない、際限のない選択肢。


「――【極光天輪きょっこうてんりん】ってとこか!」


 光の球体を操作して、三つの光輪を作る。

 それを、追ってくる銀の蛇槍に向けて放った。


 やべぇ楽しい、クリエイトのし甲斐がありすぎる。

 威力は【極光きょっこう】、消費は【無限むげん】とか、最高かよ。


 操作する物体によって限度や威力が決まっている【無限むげん】。

 それが最高レベルのものを操作できるようになったんだ……控えめに言っても、ヤバい。


「光の輪……!?それでなにをっ」


 光はウィズが操作出来る。

 浮いてチャクラムのように飛翔する光輪は、イリアの【念動ねんどう】と同じ作用だ。


「こうすんだよ!」


 まさしくイリアと同じように手を振り、光輪を操る。

 自由に操作する光輪で槍を弾き、槍を輪に通し、締め付けるように縮める。

 締め付けられたことで魔力の流動が変動され、ガタガタと震えだす槍。


(よし思った通り、イケる!!)


「魔力の流れが変えられた!?……そんな効果がっ」


「最後はこうだ!!……八つ裂き光輪!!」


 あ、やべ。

 何も考えないで、マン先輩の技を!スマン!!後で名前変えるから!


「そんなものでっ!【シヴァ】!!……ま、魔力が練れないっ!?」


 封じられた【シヴァ】は使用者がわからなくなるほどに混乱してることだろうよ、それだけ魔力の質が変動されているんだ、光輪の効果でな。


 そして三つ目の光輪は、超高速で回転し動き、伸びて追ってきた槍を八つ裂きにする。

 ウナギのぶつ切りが如く、バラッバラに。


「――これは使える」


「……なにをっ!」


 光輪を再度発生させ、俺はそれをイエシアスに放った。

 もう分かってるだろイエシアス……お前を、拘束させてもらうぞ!!

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