9-101【国境の村にて女神は集う25】



◇国境の村にて女神は集う25◇


 物体への操作が限りのないほど可能、それが能力――【無限むげん】の効果だった……そう、だった。

 創造と想像だって限りはない、それが例え神が作った能力であれど、【無限むげん】が俺の中にある限り、俺が創造主だ。


「……【反転はんてん】」


 胸に手を当て、傷に触れる。

 一瞬だけパッ――と輝き、そして傷は消え去った。

 それと同時に……毒素も。


「な、なにを……したのかしら?」


 フラフラだった足元はしっかりとし、定まらなかった視線はイエシアスを捉える。

 一度上に顔を上げ、深く息を吸い込み……吐き出す。


「ふぅー……消したんだよ、【反転はんてん】で【無限むげん】を……【零無れいぶ】に換えて、な」


「れ、れいぶ……あ、有りえない、有りえないわ!」


 そうだろうよ、なんたって。


「――そんな能力……存在しないわっ!」


「かもね、【無限むげん】を反転させれても、普通に考えれば有限だもんな……笑っちまうよ……はははっ!」


 恐怖心、拒否感、負の感情がイエシアスを取り巻いているだろう。

 俺だって自分が怖えよ……これじゃあまるで。


「そんなの、主神様の特権じゃない!能力の創造だなんて!!」


「……神に興味はねぇよ」


 【ミストルティン】……ろくに使用もしてないのにお前を【無限むげん】に【譲渡じょうと】して悪かったな。

 しかし、【ミストルティン】と【無限むげん】が一つになったことで分かったことがある……転生の特典ギフトの能力は、ある程度自由だということだ。

 流石に思いのままとは行かないが、それでも神のレールを外れて、自分の思う能力に修正が可能だと、そうだと知った。


「零という限りなく少ないものを、無という形で完全に消す……それが【零無れいぶ】だ。だから傷も、毒も消えたのさ。だからといって、体力回復ではないんだけどな」


 両手を大きく広げて、俺はピンピンしていることをアピールする。

 先程と真逆、立場も【反転はんてん】ですね。


『――誰が上手いことを言えと。ミオ、解析完了しました……【無限むげん】は【ミストルティン】と統合されて、操作性が異常に広がりましたよ……これまでの物体操作のみから、自然干渉も可能になりました』


「って事は、こういう事もできると」


「――なに」


 会話の途中で悪いねイエシアス。

 ウィズの言うことを実践してみたいし、なにより……【無限むげん】の進化が嬉しすぎる。


 俺は【紫電しでん】を発動する。

 しかし移動はしない……足元にバチバチと紫色の電流を発生させ、そこに【無限むげん】を使用し、書き換える。


『そういう事です』


 想像は武器だ、創造は自由だ。


「――【紫電裂翔しでんれっしょう】」


 足元の波打つ電撃は形を変えて、刀剣のように整えられる。

 それが十数本……翔ぶのは五本。


「……き、効かないわよっ……そんなも――」


「それはどうかね」


 雷刃はまっすぐにイエシアスに飛翔する……しかし嫌がるように、雷刃は逸れ。

 イエシアスはそれを能力の無効だと思うことだろうさ。


 バチッ――


「なっ――!っ!!」


 逸れた雷刃は落ちていた小枝を弾く。

 弾かれた小枝は加速し、電磁砲の弾丸よろしく……イエシアスの肩に――刺さった。

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