9-95【国境の村にて女神は集う19】
◇国境の村にて女神は集う19◇
転生者である俺に、女神を殺すことは
それは当然、目の前で驚く表情を見せるイエシアスに、ダメージを与えることすらも出来ないという事だ。
ならばその場合どうするのか……出来ることは限りなく少ないし、イエシアスが女神の力を行使してきたら敵うはずがない。
いくつか考えはある。
その一つ……イエシアスも、アイズと同じで人間に近くなっているという事を想定する。
「アンタの気配も魔力も、直前までは察知できなかった。【
「教えるとでも?」
イエシアスは立ち上がる。
自然と、触れてもいないのに土汚れが消え去っていた。
だけど余裕がないようにも……見えるよな?
「教えてくれよ、これで最後かもしれないだろ?俺とアンタが会うのはさぁ?」
「うふふ……そうねぇ、君が死ぬからかしら?」
どこまでもそういった考えなんだな。
アイズともエリアルレーネ様とも、まったくベクトルの違う考えは……転生者にとって害悪以外の何物でもない。
「そうやって自分の転生者すらも道具にして、目的のためなら手段を選ばないってのか……」
俺は【ミストルティン】を腰にしまい、空いた手で左胸に当て、先程までの猛烈な痛みを思い出す。
「心臓の痛みが消えたのは……その原因が
「……それがなに?」
ここまでされたら流石に察しがつくさ、シャーロット女王の可能性に。
だけど、最後の転生者はクラウ姉さんのはず……その存在の意味はなんだ?
「俺があの女の子に殺されたのはまったくの偶然だった。勘違いで刺され、肋骨貫通、心臓一突き……強烈な痛みと出血、そりゃ死ぬさ」
「酷い逆恨みねぇ……」
髪の毛を触りながら、イエシアスは興味なさそうにするが、答えてはくれる。
「そうだよ。だけど、俺にそんな事をされる覚えはない。善良とは自分で言えないが、それでも普通に過ごした三十年。つまらない人生だったと嘆いた時もあったし、転生だなんて漫画みたいな展開にウキウキした自分もいた」
「念願叶ってよかったじゃない、私たち女神にとっては雑務だけれどねぇ」
その言葉に、俺は右手の【カラドボルグ】の切っ先をイエシアスに向け叫ぶ。
「転生の流れのことを流れ作業のように言うな!それで救われた転生者もいるんだよ!」
「それはごめんなさいね、でも事実よ……面倒だらけで、私は直ぐにウィンスタリアへ権限を渡した――だからお抱え転生者は少ないのよね」
「知るか!聖女を
一つの結論として、シャーロット女王は俺を殺した――あの女の子だ。
シャーロット女王と初めて会った時に起こった胸の痛みも、消えた痛みと同じ……イエシアスは効力があると言った。
何らかの技か魔法、能力で……シャーロット女王の力を俺に作用させたと考える。
「……それ
「うっ――!」
悪寒……背筋に緊張の汗が流れる。
強烈なプレッシャーと、失言に対する怒りを……俺はイエシアスから受けたんだ。
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