9-87【国境の村にて女神は集う11】
◇国境の村にて女神は集う11◇
ミオにこの不穏な状況を知らせたミーティアも、その騒動を聞きつけたのは数分前であり、まさにミオと同じく混乱するのは……数分後だ。
自分たちに用意されたプレハブ小屋で、ジルリーネが部下のサイグス・ユランドへ説教をしている場面を、ミーティアは白い目で見ていた。
「クラウへの伝言のあと、まさか何もせずにそのまま滞在し、あまつさえイリアと問題を起こすとはな……」
「し、しかしですねジルリーネさま……」
床に正座させらるという古典的な形態で反省を示す、エルフの男サイグス。
もともとはジルリーネの使者であり、エルフの里【フィンデルフォート】へ向かうミオからの伝言を、村に向かったクラウにへ届けるという使命を仰せつかっていたのだが。
「問答無用!!」
「――ひぃ!す、すみませんでしたぁぁぁぁ!」
ミオの仲間であるキルネイリア・ヴィタール。
人間とエルフのハーフである彼女に、純粋種のエルフであるサイグスはいい気持ちを持っていなかった。
そこが火種となり、彼女を
「まったくお前たちは……視野を広げろと、先王陛下もよく口にしていた。その言葉は女王も受け継ぎ、数の少ないエルフの生きる
「……し、しかしですねぇジルリーネさま――ひっ」
ギロリとジルリーネは睨むが、サイグスも譲らなかった。
ゴクリと喉を一度も鳴らして、突っかかるようにジルリーネに。
「……しし、しかしあの娘は、わたしに口答えするんですよ!今までも数人、ハーフエルフとは会ったことがありますが、あそこまで口の減らない女はいませんでした!」
「――当然ね、ミオやクラウ、それに私の友人だもの」
作りの雑なテーブルに肘を付きながら、ミーティアが呆れたように言う。
しかし、それが答えだった。
「そうですね、お嬢様……イリアはミオの仲間であり友人だ。それにわたしが気にかけている時点で将来有望だと気付け、バカモノ――む?」
説教の途中ではあるが、ジルリーネの長い耳がぴくんと跳ねた。
「どうしたの?」
「……いえ、トラブルのようです」
「トラブル?外で……?」
ミーティアも立ち上がり、外へ出る。
すると、そこには避難してきたであろう村人が。
ジルリーネはその人間の女性に声をかけた。
「――もし、何があった?」
「あぁお客人さま、いえね、ちょっと乱暴な人が現れて……黒い髪の人が、緑の髪の女の子に襲いかかっててねぇ……ウチらはアイシアが逃してくれたからいいけど、大丈夫なのかしらねぇ」
「はいぃ!?――あ、アイシアは戻ったんですね」
思わずミーティアは声を上げつつも、アイシアが村人を避難させたと感心。
そして、黒い髪は言わずもがなユキナリ・フドウ。
緑系統の髪は、その仲間のライネ・ゾルタールか……黄緑色の髪のキルネイリア・ヴィタールだけだ。
「今はお仲間のお嬢さんが静めにかかってるけど……どうかねぇ」
「仲間って事は、フドウさんの……?まさか、セリスって言う冒険者――じゃなくて……」
ミーティアの言葉にジルリーネは静かに
二人との出会いは冒険者セリス……しかしその後すぐに、帝国皇女セリスフィアだと分かった。更には【オリジン・オーブ】を所持する
「――ジル、行きましょう」
「はいお嬢様……サイグス!お前はそこに正座していろ!!わたしが戻るまではずっとだ、いいな!!」
そう言って二人は、村人が逃げてきた方角へ走り出す。
サイグスは「そんなぁ!」と叫ぶが、もう聞こえてはいないのだった。
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