9-82【国境の村にて女神は集う6】
◇国境の村にて女神は集う6◇
村の中央部、井戸の修理をしていたアイシア・ロクッサにも、その騒動が見えた。
「な、な、なにごと!?」
おばちゃま方を庇いながら、
「え……イリア!?なんで、あの人は……ユキナリ・フドウさん??」
理解が及ばなかった。状況が飲み込めなかった。
イリアの事情もユキナリの事情も知りはしないアイシアには当たり前だが、イリアはミオの友人であり、ユキナリは帝都のお客様なのだから。
「イリ……きゃ!」
石の破片が飛んできて避ける、当たることはなかったが、危ない。
「何がどうなって、これ……マズイよねぇ……?」
次第にザワザワと、村人たちも騒ぎに気付いてこちらへやってくる。
「……イリア!イリア!!……無視!?いや、き、聞こえてないの?」
視線を一度も合わせることなく、イリアは親の仇でも見るような視線でユキナリを睨んでいた。
この場がどこなのかも、誰が見ているかも関係なさそうに。
「――アイシアさん!」
上空から声。
アイシアは咄嗟に上を向くと、そこには
「セリスフィアさんっ……ど、どうなってるんですか!?あの人、セリスフィアさんの部下ですよね!?」
風に乗ってやってきたセリスフィアは降り立ち、焦ったように。
「ごめんなさい、非常事態で。直ぐに村の人たちを避難させてほしいの、出来れば
セリスフィアは自然と周囲の人たちに目配せ……いや圧をかけていた。
それだけの緊迫感を内包した事態なのだと、アイシアは喉をゴクリと鳴らして理解した。
「わ、分かりました――皆さん、避難しましょう!今すぐです!!」
アイシアは大きな声で聞こえるように、周囲のおばちゃまたちを引き連れていく。
理解が早くて助かると、セリスフィアは少しだけ安堵した。
しかし直ぐに表情を変え。
「さて、そろそろあっちに風が着く頃……それまでは、私がなんとかしないとね」
そう言って
【オリジン・オーブ】は一瞬だけ光り輝くと、その形状を変えた。
ミーティアが魔力を弓に変えるように、セリスフィアも同じことが出来るのだ。
「……き、緊張するわね、久しぶりすぎて。でも、そんな事は言ってられない……不出来な部下の尻ぬぐいは、皇女である私の役目!」
その形状は槍剣。
剣のように長い刀身と、槍のように長い柄。
人によっては扱いにくい部類の武器だろう。
しかしセリスフィアは、剣と槍、双方を得意とする。
「セリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラス。行きますっ!」
帝国皇女セリスフィア。
帝国最強の一角、姫であり戦士であり転生者……その実力は。
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