9-73【神の歴史7】



◇神の歴史7◇


 しなければいけない事、やらなきゃ行けない事、今後の目標だな。

 目に見えないこともまだ多いけど、それでも大きなしるべが出来た。


 【女神オウロヴェリア】にまつわる能力、正確には不明な物が多いが、その上位能力を集めることで、エリアルレーネ様はそれを集積させて女神の象徴たるあかしを創り出せるらしい。

 それがあれば、アイズが消えることなく女神を増やすという、いわば疑似女神というべき存在を自分たちの手で誕生させることが出来る……というものだ。


「……アイズ、そろそろ疲れたでしょう」


「まぁね」


 少し顔色の悪いアイズに、エリアルレーネ様は寄り添い背を撫でる。

 まるで姉妹のようだな。


「アイズも【神命与奪しんめいよだつの義】?をやってくれるらしいし、俺たちの今後はゆっくり……とも言えないけど、やれることからやっていかないとな」


「そうね」

「うん、だね」


 俺の言葉にミーティアとアイシアがうなずく。

 終わりの合図だという事を理解してくれたようだ。


「それじゃあアイズ、お前はエリアルレーネ様に力を借りてでも……生き残れ」


「言われなくても、そうするって言ったでしょ」


 視線を逸らしながらも俺にそう言うアイズ。

 あれだけエリアルレーネ様の力を借りることを拒否ってたのに、素直になってくれて良かったよ。

 そんなアイズを見てエリアルレーネ様も笑ってるし、ひとまずはコレでいいんだよな、多分。


「それじゃあ俺たちは戻るから、クラウ姉さんのことも気になるし」


「分かったわよ、クラウにも伝えておいてよね……悪いけど」


 お前が人に悪いと思う事があるとは……


「ほらシッシッ!!」


 ほんのりと頬を薄く染め、アイズは両手で俺たちに去れと手を振るった。

 照れてるのか、それ。


 そうして部屋を出ていく俺たち。

 その去り際……唯一地蔵のように静かだった人物が、俺の肩を掴んだ。


「――ミオ、少し話がある。夜でもいいから時間を貰えないか?お嬢様も、当初の予定を話さなければいけませんよ?」


「え?」

「あ……!」


 ジルさんがそう言って、ミーティアに視線を送った。

 完全に忘れていた感じで、ミーティアは口元に手を当てる。


 そういえば、教会に来る前にミーティアが言ってたな。


「ルーファウスの事ですね」


「そうだ。あやつの都合もあるからな、話はあやつが来てからしようとも思っていたのだが……」


 事が事になって来てるしな、もし問題があるような話なら、一気に片付けておきたいという考えもあるし。


「分かりました。上に場所を作るんで、そこで話しましょう」


 もともとは会議に使う素材を集めていたんだ、場所はいくつあっても足りないくらいだし丁度いいさ。


「ああ、では頼む」


「――あ、じゃああたしは地下の広場で村の皆にも色々と話をするよ」


 アイシアが言う。


「頼めるか?」


 村の人たち、特に村長である父さんやアイシアの両親。

 それ以外の人にも説明は必要だ。

 俺は意外と忙しいし、やることが更に増えそうだ……村人であるアイシアが一番の適任者だし、任せるのが一番早い。


「うん、任せて……しっかりきっちり説明しておく!」


 途中で色々と分からなそうになっていた気もするけど、本当に大丈夫だろうか。

 何故か自信満々のアイシアを見て、俺とミーティアは「はは……」と笑う。

 そんな調子で俺は教会を出て地下を上がり、ミーティアとジルさんの話を聞くために、【無限むげん】を使うのだった。

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