9-72【神の歴史6】



◇神の歴史6◇


 【女神オウロヴェリア】にまつわる能力と武器。

 例に上げれば【破壊はかい】や【強奪ごうだつ】、他にも多く存在するだろうが、それを集めれば……エリアルレーネ様なら、それを女神の象徴しょうちょうと言うべきものに定着させられる、らしい。


 しかし問題は、アイズの言う通りその数がどれだけあって、どれだけ必要か、だ。


「ウィズ、お前何か知らないか?」


 【叡智えいち】だって言うなら、全能力を把握はあくしていてもおかしくはない。


『――正確な数は不明です。ウィズのデータベースに記録されていない事が多すぎて、それはウィズを創りしお方にお聞きください』


 おいこら、それってつまりアイズだろ。

 アイズが【叡智えいち】に記録しておいたデータが少ないってことだろ!


 俺はジト目でアイズを睨んだ。


「な、なによ……仕方ないでしょーが!、転生者用の能力と武器がどれだけあると思ってんのよ!女神由来の能力の他にも、自然発生型とかハズレ武器とか!めちゃくちゃあるんだからね!?」


 はい逆ギレ。


「分かったって、そんなに興奮するなよ」


「してないし!」


 バンバンとベッドを叩く。

 いや、してんじゃねぇか。


「――少なくとも私にまつわる能力は五つ、アイズもイシスもウィンも、そのはずよね?」


 イエシアスのあだ名ってイシスなのか。

 ウィンはウィンスタリアか。


「……そうね。【豊穣ほうじょう】、【美貌びぼう】、【叡智えいち】、【無限むげん】……後は――」


 若干言いよどむアイズ。


「後は、なんだ?」


「……これはどこにあるか分からないけど」


 それって、既にどこかのにいる転生者に渡っているって事か。


「ああ、なに?」


「――【縹緲ひょうびょう】よ」


「「「ひょうびょう?」」」


 無知出ました。

 俺とミーティア、そしてアイシアが頭上に疑問符を浮かべていた。


「――簡単に言えば、“果てしなく広い”と言う事です。【無限むげん】などとは、相性がいいですね」


「アイズレーン様は、豊穣神だけあって自然にまつわる能力が多いのですね……」


 なんだか感心したふうにミーティアが言う。

 実際確かに、【豊穣ほうじょう】は木や草を成長させたりして操る。

 【無限むげん】は地面とか無機物……オブジェクト扱いの物体の操作。

 【美貌びぼう】は、まぁ自然か??

 そして【叡智えいち】は、言わずもがな知恵なんだろうが、元になった本人が悪いだろコレ。


『しつれ――』


「その【縹緲ひょうびょう】って能力が俺にも揃っていたらどうなっていたんだ?」


「特になにもないわよ。ただ単にあんたが強くなるだけ、そもそも転生者は一つしか能力を持てないんだって。あんたが例外中の例外なんだから」


 そして【強奪ごうだつ】とか言う能力で他からも奪えるようになりました。

 控えめに言ってもヤバいな。

 だけどこのチート能力の数々、使えるようになった時こそ、真の始まりな気がする。

 身体の成長に合わせて増えるんだよな確か。そうなれば……時間が早く経過しろとも思うけど。


「――焦るんじゃないわよ。あんたがそこまで考えてくれるのなら……あたしだってそこまで我を通す事もしないわ」


「え」


「あら、それって……」


 アイズは真剣に俺を見て。


「あんたが覚悟を決めてくれているのなら――あたしも諦めない。エリア」


「はい」


「……【神命与奪しんめいよだつの義】、改めてあたしからお願いする」


 シュバッ――


 アイズが折れた。

 エリアルレーネ様に頭を下げ――って一瞬すぎだろ、ほぼ見えなかったぞ。

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