9-70【神の歴史4】



◇神の歴史4◇


 「話しに戻りますね」と、エリアルレーネ様は【女神オウロヴェリア】について続けてくれる。

 そういえばちょっとズレてたな……話が。


「すいませんエリアルレーネ様、お願いします」


「ふふふ……いいんですよミオ、私も仲間がいなくなるのは寂しいですからね」


 アイズは「なにが仲間よ」と言いつつも、顔を逸らしていた。

 もしかして照れてるのか、お前。


「オウロヴェリアが抹消されたのは、誕生してすぐです……本当にすぐ。一番初めに生まれた女神でありながら……他の誰も、知ることのない女神。私もほんの少ししか情報を持ち得ていません……なので詳細は不明。そういった方が早いかもしれませんが」


「……それでもなにもないよりは、ねぇミオ」


「ああ。ティアの言う通り、お願いしますエリアルレーネ様」


「分かりました、いいですね……アイズ」


「……分かったわよ」


 諦めたように、アイズは渋々了承する。

 しかしまだ……なにか考えてる顔だな、俺を見てどうしたんだ。


「オウロヴェリアは――復讐の女神として生まれましたが、その根本とするのは主神の感情です」


 主神の負の感情という事だ。

 主神はただ一人残った神として、女神を五柱誕生させた。

 それぞれ自分の感情や能力、由来と成るものを分け与え……それこそ実の娘のように。


「しかしその感情は行き過ぎました……恨みや憎む気持ちだけを集約させ、まるで悪神のように」


 一番初めに生まれたのが負の神で、だから残りの女神にはそういった強い怨念はない……そういうことだろうか。

 イエシアスは若干怪しい気もするけど。


「ほぼ同時、少し遅れて私が二番目の女神として誕生し……オウロヴェリアは消されました。そしてウィンスタリア、イエシアス、アイズレーンが誕生して……この世界を管理する女神の出来上がりです」


 この世界は広い、だけど……神の数が圧倒的に割りに合っていない。

 【サディオーラス帝国】に【リードンセルク王国】、【テスラアルモニア公国】……この三国だけだろ?

 それだと他の小国や、近隣諸国には神がいないということにならないか?


「険しい顔ですね、ミオ……」


 まぁちょっと、考えなければなと思ったよ。


「いえ、続けて下さい」


「……私が空席と断言するのには理由があります。それは……力です」


「力?神の御力と言うことでしょうか……?」


 ミーティアが首を傾げ、アイシアも同じようにうなずく。

 しかしエリアルレーネ様は横に首を振るい。


「いいえ、もとを正せばそうとも言えますが……この場合の力というのは、転生の特典ギフトの事です」


「!――そうか、負の感情や悪の力を宿した……オウロヴェリア由来の能力って事ですね」


「そう。女神には由来と成ると能力があります……アイズならば【豊穣ほうじょう】、私ならば――おっと、これはまだ秘密ですね」


 可愛らしくウインクをするが、あなたは運命の女神様でしょう。

 なら【運命うんめい】……というのは安直だろうか。


「能力や武器は数多くありますが……上位のものほど神に近く、それを権能と呼びます。そしてそれは当然オウロヴェリアにも存在し、そしてその能力は転生者へと渡っているはずですよ」


 例えば、闇属性の能力や武器、意味合いだけなら悪い言葉となるような、そんな能力――心当たりは当然あるさ、俺にだって、そんな能力があるんだからな。

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