9-69【神の歴史3】



◇神の歴史3◇


 抹消された女神、オウロヴェリア。

 その詳細を語るエリアルレーネ様の言葉を、クラウ姉さんとセリスを除いた俺たちは真剣に聞く。

 この異世界の成り立ち、そして世界の創造主である主神の身勝手、それを補おうとした――元はこの世界の住人だった少女たちの、神の歴史だ。


「主神によって転生させられ、女神として生まれ変わった私たちには……寿命があります。長くて千年以上……力の使い方やその個体によっては、百年持たない女神もいました」


「あたしは女神に成ってから数百年、特にやることもなく力を温存してたわ……だから短命ではなかった」


 アイズは言う、なかったと……しかし今は。


「この子は主神に内緒で色々としていたのです……それはもう残りの神力を剥奪はくだつされるほどに」


 それが、俺やクラウ姉さんを不正に転生させたと言うアレか。

 俺はその時に残っていたチート能力全てを積まれた異常転生者、クラウ姉さんは最後の転生者として、意図的に【クラウソラス】を前の転生者から引き継いでいる。

 強くてニューゲーム的なやつだ。


剥奪はくだつ……だからアイズは、女神なのにほとんど人間と同じなのか……」


 初めからアンバランスだとは思っていたんだ。

 女神っぽくないし、神と言う割には失敗も多い……多すぎか?


「そー言うことよ。神の力は通常の何倍も魔力を使うし、神力と言う名の寿命を減らされている状態じゃあ、限度があるもの」


 エリアルレーネ様は「だから素直に【神命与奪しんめいよだつの義】を……」と恨めしそう、いや……心配そうに言うが、アイズは「ふんっ」とそっぽを向く。

 そこは素直にやってくれよ。


「とにかくねぇ、ミオ……あんたが言う女神を増やすなんて、やすやすと出来るわけはないのよ」


「それは分かってるって。だから模索もさくするんだろうが……時間がかかってもいいから、アイズはエリアルレーネ様に延命してもらって、アイシアはなるべく女神に関わる状況を減らすようにしようぜ?その間に……俺はヒントを探すさ。その空席を、埋める方法をさ。エリアルレーネ様も、面白い話って言っただろ?だったら可能性はゼロではないはずだ」


 言うことだけは簡単だ。

 実行することが容易たやすい事じゃないというくらい、そんな事ははなから理解している。

 だけどやらないよりはマシだし、やらない後悔よりも、やって後悔するほうがまだいい。


「そうですよアイズ、ミオの言う通り……貴女あなたはまず回復、【神命与奪しんめいよだつの義】を受けなさい。少なくとも残り数回……数年分ですね」


「……」


 エリアルレーネの言葉に、アイシアやミーティア、ジルさんもうんうんとうなずいて同意を示す。俺も同じだ。


「何をするにも、神には神力が必要不可欠です。それに、主神が【オリジン・オーブ】に仕掛けまでして、アイズを邪魔するということは……」


 アイズの行動に、何か自分の不利益があるからだ。


「そうだよ、アイズがしてきたことは間違いじゃ無いってことじゃないのか?」


 主神は【オリジン・オーブ】に仕掛けをして、女神の世代交代を早めようとしたんだ。

 それはつまりアイズに何かをされたら困るから、自分に害があるから、現在のアイズを……消そうとしたという事。

 ならそこになにか、ヒントが有るはず……探すんだ、なんでもいい、なにか鍵になる何かを、神の弱点を。

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