9-68【神の歴史2】



◇神の歴史2◇


 長い歴史の中で、この異世界【レドゥーム・アギラーセ】には、様々な他の異世界から数々の種族が招かれ、そして命を育み、星の生命を紡いでいった。

 有に千年以上、俺たちの見識では正式に数える事すらできない、長い長い歴史。


「そうして完成し、これからも長い歴史を築きたい……ものですよね、アイズ」


「……そうね、それが理想であり、創った側の責任だわ」


 エリアルレーネ様とアイズは、まるで遠い理想を夢見る夢想者のようだった。

 到底その願いは叶わないのだと、知っているかのように。


「エリアルレーネ様、女神の枠……つまり席が空いている、空白の状況だって言いましたよね?」


「そうです」


「……って言っても、あたしやイエシアスは知らないのよ、その女神の事を」


 アイズやイエシアスが知らない、抹消された女神か……いったいどんな女神なんだろう。

 俺はふと、左胸を触っていた。


「ミオ……?どうかしたの?」


 部屋の外にいたミーティア、そしてアイシアも俺を気にした。


「あーいや、なんでもないよ……はははっ」


 たまに痛くなる。

 前世の時からも、急に胸が痛くなる時があった。

 多くの人が経験したことのある、よくあることだと思ってたけど。


「……クラウさん?」


「――平気……です」


 俺と同じく、なんだか苦しそうにするクラウ姉さん。

 姉さんを気にしてくれたのはセリスだ。

 ただ違うのは、首を気にしている感じだった。


「私のことはいいから……話をしてて下さい、後で聞くので」


 そう言って、クラウ姉さんはこの場を後にする。


「――ミオ、私が付いていくわね。エリアルレーネ様……それではまた後でお迎えに上がりますね」


 様子が気になったのか、セリスが後を追ってくれる。


「ああ、頼むよ」


「ええ、よろしくね――さて話に……アイズ?」


 俺とクラウ姉さんの様子を見て、何かに気づいたように。

 アイズは真剣な面持ちでクラウ姉さんの去る背を見ていた。


「どうしたんだよ、急に真面目な顔をして」


 似合わないぞ、真面目な顔は。


「――あんたねぇ、いや……でもそんな事、ねぇ?」


「ねぇ?と言われましても」


 顎に手を当てて、エリアルレーネに同意を求める。

 なにを感じたかは知らないが、俺たちのことはいい。

 今はお前だ、お前が優先なんだから。


「では話しに戻りますね」


 コホンと咳払いをして、エリアルレーネ様が話をする。いや、してくれるの間違いか。


「抹消された女神の名はオウロヴェリア。主神の負を具現化した……異端の女神でした」


 アイズレーン、イエシアス、ウィンスタリア、エリアルレーネ。

 そしてオウロヴェリアか……異端の女神、何も悪くないのに、誕生してすぐに消された女神の気持ちは、一体どういう心境なのだろうか。

 きっと、俺たちの誰にも……知ることは出来ないんだろう。

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