9-66【新しい世界が生まれる瞬間12】



◇新しい世界が生まれる瞬間12◇


 理解は出来ても、納得が出来ない事はよくある。

 その都度強引に飲み込んで、必死に受け入れて、知らないうちに慣れていくんだ。

 だけど、生き死には違う……本当なら慣れたくなんかないし、突如として訪れた事故や災害で失われる命に、理解も納得もないんだろう。

 寿命という例外はあれど、それでも今のアイズにはもっともっと生きていて欲しい。

 これは我儘なんだろうか、俺をこの世界に転生させてくれた、ちょっとポンコツで部屋の汚い女神さま……なぁ、俺がお前を助けたい、救いたいと思うのは、間違いなのか?


「――なぁ、どうなんだ?お前を人間に戻す方法……ないか?」


 俺の言葉にアイズは、ため息交じりに。


「はぁ……残念だけどないわ。あるとすれば、その時点で人間としての生を失う。それは死よ。人間の身体を取り戻した瞬間に、崩れ腐って朽ちる……」


 だよな。うん。大丈夫……そこまでは予想通りだ。

 アイズもそれが分かってて、その女神の運命を変えたくて……こうして主神に内緒で色々としてるんだろうし。


「よし――なら、これはどうだ?」


 別に考えが一個だなんて言ってないからな。


「な、なによ……まだあるの?」


「ああ、ある。どれくらいの勝算があるのかは分からない、けど……――お前とアイシア、両方が残るのなら……どちらも女神として生きられるのなら、どうだ?」


「……そんなの無理に――」


 否定をしようとした。

 しかしアイズは言葉を途切らせ、何かを考えるように……


「いや……なくはないのかも、いや、でも……う〜ん」


 おもむろ身動みじろいで、頭を抱え、忙しなく揺れる。


「なにかあるのか?」


「――ちょっと待って、考えてんだから」


 その考えを共有してくれよ、そうすれば俺も考えられるだろうが!

 そんな俺の思考を読んだかのように、突如として扉が――ドパーン!と開かれた。


「――お教えしましょう!!」


「うわぁっ!」

「ひゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」


「はい?どうしたのですおどろいて、ノックはしましたよ?」


 部屋に現れたのはエリアルレーネ様だった。

 本当にノックしたの?全然気付かなかったが。


「それよりも面白いお話をしているではないですか、私も混ぜてください」


 ズカズカと入室してくる。

 心做こころなしか目が輝いてますけど。


「あ……」


 部屋の入口にミーティアとアイシアとセリスを発見した。

 更にその後ろには疲れた顔のクラウ姉さんとジルさんも。

 皆、一様に手を合わせている……止めたんだろうなぁ。


「あんたねぇ!来んなって言ったでしょ!!」


「私は直接言われてませんから」


 ニッコリと笑うエリアルレーネ様。

 今度からは直接言おう、多分意味ないけど。


「――それよりも、女神の在り方……その別認識、その話は割と重要ですよ、アイズ。貴女あなたも分かっているのでしょう?本来五柱しか存在しない女神が、増える可能性……そして事実、枠は一つ空いている・・・・・のですから」


 そのエリアルレーネ様の言葉は、歴史を覆す事になりえる、この異世界の進歩、新しい世界の誕生の可能性を秘めた言葉だった。

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