9-64【新しい世界が生まれる瞬間10】



◇新しい世界が生まれる瞬間10◇


 紫は特殊――アイズの言うその言葉には、重みがあった。

 きっと歴代の【女神アイズレーン】も、紫を基準とした何かにまつわる存在だったんだ。


「アイズレーンは紫、エリアルレーネは緑と青、そんな感じでね……女神には特徴とした色があるのよ。わかりやすい話が、属性よね」


 EYE'Sアイズは【女神アイズレーン】に関するものだが、エリアルレーネ様の転生者であるセリスフィアがEYE'Sアイズだって言うのも、なんだか不思議な話にも感じるが。

 多分、女神それぞれの寿命が近づけば、EYE’Sアイズににた存在が現れるんだろうな。


「後はイエシアスの黒とか、ウィンスタリアの赤と白ね。まぁ他の女神の選別は別の時代に行われているから、格別今は関係ないけどさ」


 イエシアスが黒は解釈一致だ。

 ウィンスタリアというのは、確か【テスラアルモニア公国】で崇拝すうはいされる女神だよな、【救世の女神】だったか……

 そして今はEYE'Sアイズ……【女神アイズレーン】の問題であり、他の女神は直接関係はないということだ。

 だから他の女神も、次代への継承という展開は避けられないんだろうな。


「難しいですけど……べ、勉強になります」


 アイシアは難しい顔でアイズの話を聞いていたが、多分半分くらい理解していないと思う。

 それほど無縁だったんだ、こういった問題から。

 それなのに、今は渦中の人物だ。


「ゆっくりでいいさ、アイシアも……アイズもな」


「うん」


 アイズは「別に覚えなくてもいいわよ」と捨て笑う。

 その気持もわかってしまうのが、辛いところだ。


「それで、アイシアが女神にこれ以上近づかないためには、能力を使わないほうがいい……でもそれは能力的に難しい、それは分かりましたけど。それならどうすればいいのですか?」


 ミーティアがアイズに問う。

 能力を使わないほうがいいのは理解出来る、しかしアイシアの能力的にそれは難しい。ならばどうするのか。


「……もっとも簡単で、もっとも残忍な方法よ」


 アイズが言うそれに、当然心当たりがあった。

 しかしそれだけは、きっと誰も望まない。

 アイズだって、その最悪の方法だけは手段として選ばないはずだ。


「それって……」


 アイシアが深刻そうに、喉を鳴らした。

 不安にもなる。だから言わないとな……それだけはしないと。


「――大丈夫だ。それだけは絶対にしない、アイズだって手段を言っているだけで実行するとは一言も言ってないだろ?なぁアイズ」


「ったり前でしょ。それに……アイシアはもう極限まで女神に近づいてる、あたしがポックリ行けば、もうそのまま繰り上げ当選よ」


 冗談でもやめてくれ。


「な?」


「う……うん」


 まだ不安そうだ。

 当たり前だよな、誰だってそうだ、怖いに決まってる。

 だってその方法は――命を奪うこと。

 女神に成る前の、人間の状態のアイシアを、殺すということなんだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る