9-62【新しい世界が生まれる瞬間8】



◇新しい世界が生まれる瞬間8◇


 俺がベッドに近寄ると同時に、セリスが「ちょっとエリアルレーネ様の所に行ってくるわね」と、部屋の外に出た。

 するとミーティアがそれを見て言う。


「ああそう言えば、クラウとジルもエリアルレーネ様について行ったわ。さ、祭壇?がどうとか言ってたけど……なにか知ってる?」


「あ〜、この場所の更に地下だな。俺はまだ行ってないけど……エリアルレーネ様は何かする気なのかな?」


 俺は指を地面に指し示してミーティアに教える。

 祭壇がどうとかはこの前にも聞いたな。村人がそこに避難していると、学びがどうとかも言っていたはずだ。


「――多分だけど、アイズさんの延命だと思うよ」


 アイシアが答える。

 もう予想も出来てるのか……だけど確かに、祭壇というくらいだし。

 アイズやエリアルレーネ様にしか、女神にしか出来ない何か・・なのかもしれない。それを手伝ってくれてるのかな、クラウ姉さんとジルさんは。


「延命、か」


 ベッドで眠るアイズは、どう見てもぐっすり眠っているようには見えない。

 意識もないし呼吸も荒いし、表情も優れていはいない。


「あたしが更に女神に近づいちゃったから……アイズさんが段々と、力を失っているって、エリアルレーネ様は言っていたけど」


 アイシアはうつむき、自分を攻めるように拳を握った。

 スカートがグシャグシャになるほど強く、両の手で。


「アイシア……」


 気をかけるのはミーティアの方だった。

 俺も気にはしているが、行動はミーティアが早かった。

 そしてそんなアイシアの言葉を否定するように、ベッドから声を上げる女神。


「――そんなんじゃないわよ」


「……ア、アイズ、平気なのか?」


「アイズさん、あたし……」


 起き上がり、アイズは自嘲気味に笑いながら自分に起きた事を話し出す。

 それは多分強がりで、言い訳で、俺やアイシアを落ち着かせるための配慮だと、俺はそう悟った。だから余計なことは、何も言わないさ。


「――今回の騒動を予期できなかったのは女神であるあたしのミスだわ。その場しのぎで教会と祭壇を作ったけど、やっぱり残った神力ではこれが精一杯だった……十分の一の規模にも達せてないんだから」


 この教会も祭壇も、アイズにとっての再現と言うことか。

 おそらく大昔の、過去のアイズレーンのだ。


「それは感謝してる、けどなアイズ……お前は――」


「平気だってば、あんたはこれ以上アイシアがあたしに代わるのを止めなさい」


「アイズさん、でも……あたし」


 俺がアイシアを止める?

 女神に成るのを、か。


「今でも、この村に女神が三柱いるようなものよ……エリアのおかげであたしが残れているだけで、本来の展開なら――継承はもう終わってる」


 それは、EYE'Sアイズとしての選別を終え、アイシアが新たな【女神アイズレーン】へと昇華すると、神に成ると言うことの確定。


「もう止められないのか?アイシアがこれ以上アイズに、女神に成るのを」


 一瞬だけ止まる。

 そして考えるように、ゆっくりとその言葉を。


「――方法は三つ、でも一つは現実的に難しい。残りの二つは……」


 その方法を知り、俺がどうするのか、どうするべきなのか。

 俺たちが抱える問題の一つ……女神の在り方を、考えなければならない。

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