9-61【新しい世界が生まれる瞬間7】



◇新しい世界が生まれる瞬間7◇


 教会まで下りて行くと、地下広場では父さん母さんを始めとする村の人たちがこぞって集まっていた。

 何をしているんだと、俺は気になったが。


「おおミオ!それにお嬢さんっ、戻ったか」


「お、お嬢さん!?と、父さん……この人は」


 セリスは俺の肩を掴み、ウインクしながら「しー」と唇に指を這わせる。

 この人いたずらっ子なんですか!?

 隠すのね、皇女様ってことを。でもいいのか……一応父さんは村の長な訳で、あー村長なのに国の皇女様を知らないってヤバいじゃん、俺もこの前まで知らなかったけども。


「どうした?いいやそれよりも、あの不思議な光景はなんだったんだ!?お前、何か分からないのか?アイズレーン様は何も仰らないし、アイシアは具合悪そうだし……クラウはなんか怒ってるし!どういうことなんだミオ、お父さんを助けてくれ!」


 気持ちは痛いほど分かるけども。


「父さん、もしかして村の皆が見たのか?あの大都会の光景を……?」


「あ、ああ。父さんも母さんも、レインやコハクも見たそうだ。他の村人も、全部が全部そう答えたぞ?」


 やっぱり、村の全土に広がったあの暖かい魔力の光は……あの光景を村人全員に見せたんだ。

 そうしろと言わんばかりに、誘導されている気もするが……これが罠ってことはないよな?


「あれは未来ですよ、村長さん。この村の輝かしい未来です」


 あ、ちょっとセリス!


「おお!やはり、お客人もそう思いますか!焼けてしまった村が……ああも大きく……」


 感慨深そうに、父さんは涙を浮かべた。

 それは本気で村を思っていたという事で……流れに任せて就任した村長だけど、父さんは父さんなりに頑張っていたから。それだけは分かるからな。

 不器用で手順悪いことばっかだけど。


「とりあえず、それは未来の話ね!今は今の話が必要だろ?だからその場を設けるから……父さんも出席してくれよ?」


「お、おお……?」


「それじゃあ俺たち行くから、その時が来たら呼ぶからなー」


 何だか分かってなさそうな父さんを置いて、俺とセリスは教会に向かう。

 中に入り、聖堂を過ぎ休める場所……アイズの部屋へ。


「失礼します」


 セリスが言う。

 「はい」と返事が聞こえ、ってミーティアか。


 扉を開けると、真っ先に目に入るのはベッドに横になるアイズだった。

 そしてアイシアが椅子に座り、まるで病人と看病する人の構図だった。


「アイシア、平気なのか?」


「うん、アイズさんよりは平気だよ」


 そんなアイシアを見ながら、ミーティアが俺の隣で苦笑いを浮かべる。


「休んでって言っても聞かなくて……」


 滲み出る疲労感。

 気を遣わせたな、しかも結構頑張ってくれたみたいだ。

 しかしアイシアがここまで頑固と言うか……いや、普通の状態だったら多分素直に休んでるんだろうけど。


「悪いな、ティアもこっちに着いたばかりなのに」


「ううん、私は」


 自分はいいのと、そう言ってくれるミーティアに感謝しながら、俺はベッドに近寄る。

 瞳を閉じるアイズの小さな息遣いが、やけに心細く感じて……

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