9-60【新しい世界が生まれる瞬間6】



◇新しい世界が生まれる瞬間6◇


 俺の考えが揺らいだのには、様々な訳がある。

 村を世界一にする覚悟が揺らいだのではなく、関係者を巻き込むかどうか……巻き込んでいいものなのかの迷いだった。


 村に住む家族や友人、同郷の人々。

 村外で知り合ったイリアを始めとする、【王立冒険者学校・クルセイダー】の知り合い。

 これから村に訪れるであろう、未来の村人たち。

 そこから生まれてくる新しい命だって、そんなことになるなんて思ってないだろうよ。


「新しいことを率先するタイプじゃないんだけどな、俺は」


「じゃあきっかけになるわね、お姉様にも協力させましょう。あなたの恋人のミーティアさんにも、お仲間にもね。私の部下にも言わないとっ」


 言ってないのかよ。

 マジで直感行動派ですか、皇女様。

 でもその直感が正しい道を選んで来た、【英雄えいゆう】のそれなのかもな。

 帝国の転生者たちが慕う訳だよ。


「行きましょう……あ。そう言えば生意気な口聞いてました……死刑ですか?」


「あはははっ!いまさら言うの?本当に君は面白いわねっ……もうセリスでいいわよ、ここでは皇女も何も関係ないわ。そもそもうやまわれるのも好きじゃないし」


 寛大でよかった。

 状況によっては決別する所だったからな……口悪く話したのは悪かったと思ってるけど、そっちがそれでいいならこっちとしても助かるよ。


「了解だ、セリス。色々と……頼むよ、俺多分、知らない事だらけだから」


「――任せて」


 頼もしさもあるんだよな。

 多分【英雄えいゆう】の影響だけじゃないぞこれ。

 この人が生まれ持った、本物の気質だろ。


「この調子で帝国の仲間も軽口叩いてくれないかしら……」


 おおやけでそれをしたら、あの人たち路頭に迷うでしょ。

 ユキナリはどうでもいいけど……ってか、ユキナリの奴は今回の事に賛成するのか?


 俺とセリスは地下の教会に向かう。

 話をしているうちに時間が経ってしまった……アイシア大丈夫だよな?


『問題ありません。むしろ【女神アイズレーン】が不調です……アイシアが余計に女神に近付いたからでしょうが……』


「……」


 やっぱりかよ。

 言ったらそうなるから、言わないようにしてたのに。


「なぁセリス、あんたもEYE’Sアイズなんだよな?女神になるってどんな感覚なんだ?」


 リアに聞くことも出来たけど、多分答えられないよな。


「……自分は自分よ。誰かになるなんて出来ないし、そもそも女神に成るなんて烏滸おこがましいでしょ。私は前世じゃそれはもう立派な一般人だったんだから」


「はは……俺もだよ」


 前世ではただの一般モブキャラだ。

 だけどこの世界ではこんなにも……俺が世界を変える一端いったんを担うことになるなんて……だれが想像するよ。

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