9-57【新しい世界が生まれる瞬間3】



◇新しい世界が生まれる瞬間3◇


 応急処置として、俺は【無限むげん】で休む場所……いつものプレハブ小屋を作ってアイシアを頼んだ。

 ミーティアとクラウ姉さんもいるし、大丈夫だろう。

 それに少し休んだら教会に戻ると言っていたからな、俺が戻る頃には誰もいないかもだな……でもって、アイシアの事が勿論気にはなるんだけど……アイズの言う“話し合い”は、多分この村、延いては世界に関わる事なのではないかという予感があった。


 だから無視することは出来ないし、今の村には安静に出来る場所が一つもない。

 例外は地下の教会だが、太陽が見えないと不安を覚える人もいるだろうし……復興は早い方がいいからな。地下は謎に明るいんだけどな。


「……【煉華れんげ】――【焼翼閃しょうよくせん】」


 両の手から発せられる業火は、翼のように広がって魔物を焼く。

 俺はプレハブ小屋を建て、アイシアを皆に任せてから直ぐに【極光きょっこう】と【紫電しでん】で空を駆けた。

 【転移てんい】で行ければよかったが、残念ながらウィズの指定する場所は行った事が無かった……ルー○できんのよ。


「ウィズ、木の魔物なのに燃やしちまっていいのか?」


『問題ありません。燃えても魔力に還るだけで、灰にはなりませんから』


 元もない事を言うなよ。


「お!落ちたな……魔物も普通に【魔力溜まりゾーン】に還ったし」


 最近は死骸しがいが残るという事も多かったからな。


「……マジで木じゃん。ドロなのか、これ?」


 俺は落ちたドロップアイテムを拾い上げて観察する。

 もうこれはそこら辺で落ちてますよね。


『【神木の枝】と言う高級品です』


「しんぼくぅ……?」


 正直言って、桜の枝を折ってしまった外国人観光客の気分だ。

 悪気も無いし、知識もないままやっちまったあの感覚。

 絶対ダメだぞ、皆。


「これがあれば、まぁまぁな規模の木造建築が出来る……って?」


 この枝一本で??


『――はい。数百人宿泊できるリゾートホテルが完成させられます』


「そこまで要らねぇって」


 じゃあ戻るか、今度は【転移てんい】で帰れるし。


「――【転移てんい】」


 一瞬の出来事のように、俺はその場から消えていなくなる。

 気付けば村の入口……そしてそこには、白金プラチナブロンドの皇女が待ち構えていた。


「おわぁ!ビックリした!」


 近い!!


「お帰り、ミオ」


 なんであんたは驚かないんだ。

 もうちょいでぶつかってたぞ……顔と顔が。


「セリスフィア皇女……待っててくれたんですか?」


「ええ、風が教えてくれたから」


 風がって……そう言えばアイシアの暴走を宥めてくれた時も、風を操ってたな。

 あ、ヤバい……ひるがえるスカート思い出しちまう。


「そ、それにしてもどうしたんです?俺が直ぐに戻るって知ってましたでしょ?」


「ふふっ、アイズレーン様には許可は得たけどね。一応この場所のリーダーは君でしょ?だからミオにもね」


 ウインクをする皇女。

 リーダー……この場所って、この村の??

 それは村長の仕事じゃないのかよと……そう思った俺の考えの甘さを、俺はこの後すぐに知らされることになるのだった。

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