9-56【新しい世界が生まれる瞬間2】



◇新しい世界が生まれる瞬間2◇


 アイシアから発生した魔力の波動。

 これは絶対に能力……未来を見せる力によるものだと、俺は確信を持っていた。

 異世界からすれば、その光景は見るからに近未来、まるで地球の日本を見せられているようで、懐かしさと共に怖さも感じたよ……何故なら、その光景は。


「些細な所が違う、それに……」


「見える人物が、あからさまに日本人じゃないわね」


 そうだ。

 見えるのは景色だけじゃない。

 街並みを歩く人たちや空を飛ぶ鳥、様々な建造物の素材。

 どう見ても日本のものじゃない……これは、この世界のものだ。


「まさかこれ、この世界の近未来?」


「――そう考えるのが妥当だとうね」


 クラウ姉さんの疑問にうなずくセリスフィア皇女。

 ああ、俺も同意だよ。


「アイシアは未来をる能力がある、【オリジン・オーブ】……アイシアの中に入ったっぽいけど、もしかしてそれが原因で……俺たちにも見えているのかもしれないよ」


「……これが、この世界の……未来だって言うの?」


 漠然とした、それでいて途轍もないテクノロジーの発展でもなければ有り得ない。

 魔物がいて戦いがある、剣と魔法の世界だぞ、ここは。


「……消える」


「ああ。よく覚えておこう……これが俺たちにとって、この異世界をどう過ごすかのターニングポイントになる気がするんだ」


 クラウ姉さん、そしてセリスフィア皇女も納得のようでうなずいてくれる。


「……落ち着いたようね」


 セリスフィア皇女はアイシアを見ながら言う。

 光景が治まると同時……やっぱりアイシアの能力によるものだ。

 だけど、なんだろうこの確信を得たような感覚は……まるで、今の光景を実現させなければいけないという、そんな使命感にも似た感覚だ。


「アイシア、平気?」


「う、うん……あたし、何を……?」


 自覚はないか。

 ミーティアの問いかけにも、アイシアは何が起きたのか分からないようだった。

 突然の暴走に、【オリジン・オーブ】が見せた突飛的な光景。

 まるで急かされているようで、アイズの言う主神って奴に文句を言いたい気分だ。


「アイシア、立てるか?ほら、掴まって」


「うん……ごめん」


 俺はアイシアのもとに寄って行き、力なく座り込む彼女を立たせた。

 この場所にいる訳にもいかないし、とりあえず休ませないと。


「――ミオ」


「ん……アイズ、どうした?」


 エリアルレーネに支えられながら、アイズは俺に言う。

 どうでもいいが、あんなに悪態吐く癖に仲いいな。


「あたしが許可する……だから全力で一つ、家を建てなさい」


「……【無限むげん】で?」


「そう。一瞬で……話し合いするわよ」


 全力の【無限むげん】で家を建てたら、城になるぞ。

 だけど……他の女神や転生者がいる前で使えと言うなら、アイズもそれなりに決めたって事か。なら従うさ、俺の女神の思うままに。


「分かった。じゃあ悪いけどクラウ姉さん、アイシアを頼める?」


「い、いいけど」


 素材拾ってくるわ。

 広めの家を作るとなると、ここにある廃材だと不可能だ。

 せめて魔物が落とす高級ドロップ品がいい。

 あいにく、俺はそれが可能だからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る