9-54【視ていく者6】



ていく者6◇


 アイシアには自覚があった。

 今回、【オリジン・オーブ】が暴走した原因だ。

 その理由は……未来を否定しようとしたからだと。


「はぁ、はぁ……」


「よかった、アイシア」


 へたり込む二人と、間に挟まっていたリア。

 この状況で、リアが何故寝たままだったのかと言うと。


「……」


「リアちゃんも、ありがとうね」


 ミーティアはリアの額を撫でた。

 汗を搔き、濡れた額を。

 そして胸元には、くっつくように存在する【オリジン・オーブ】。

 リアは無意識ながら魔力を放出して、アイシアからミーティア方面への魔力を打ち消していたのだ。

 だから、ミーティアもすんなりとアイシアに近寄る事が出来た。


「――二人共!」


 慌てて、ミオが駆けよって来る。

 今回何も出来なかったミオも、深刻そうに顔を歪める。

 アイシアの顔を見て。


「……瞳が、戻らない?」


「……そう、なの?」


 アイシアには分からない。

 その瞳の色が完全に変色して、濃い紫色に完成されていると。

 この色は、完全に【女神アイズレーン】と同色だった。


「――自意識はあるかしら?」


 ミオの隣から来て、しゃがむ白金の髪の女性。

 そして更に女神が二人。


「は、はい」


「……力を強制的に引き出されたのよ、主神によって」


「そういうことですね。かの御方は、女神わたしたちの行動を予測していたのでしょう……興味も無いと思わせておいて、こう言う事をする方です」


 アイズとエリアの二人も、深刻そうに語る。

 しかし、これは事故に近かった。


「アイズ、エリアルレーネ様も……説明してもらえますよね?」


「無論です」


「ええ。出来る事ならしたくはないけど……もう逃れられないわ」


「――ミオ!ミーティアっ!アイシアっ!」

「お嬢様っ!!一体何が……」


 アイズの家があったその場所。

 地下へと下りる為の場所から駆けて来るクラウとジルリーネ。


「姉さん、ごめん手伝ってくれ!」


 ミーティアとセリスフィアに支えられ、アイシアはふらりとしつつも立ち上がる。


「ごめんなさい、みなさん……」


「アイシアのせいじゃないわ」


「そうね。これは私たちにはどうにもできない事象……神に翻弄される人間の、運命だわ」


「セリス……」


 エリアルレーネは申し訳なさそうに、自分の選んだ転生者を見詰める。

 勿論セリスフィアとて、自分の女神であるエリアルレーネを責めている訳ではない。


「平気ですよエリアルレーネ様。私だって分かっています……主神、それが仕組んだ罠だってことくらい――っ!?」


 その言葉と同時に……まるで主神の罠が発動するかの如く。

 アイシアの瞳から魔力が発せられた。


「――み、える……」


「「「!」」」


「アイシア、どうし――」


 先程とは違うが、それでもこれは魔力だと全員が理解する。

 アイシアから放たれるのは、紛れもない魔力。

 そしてミオは気付く、アイシアの首から掛けられていたはずの【オリジン・オーブ】が、無くなっている事に。

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