9-53【視ていく者5】
◇
村が迎えたお客人の一人、帝国皇女セリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラス。転生者にして――
強風の舞う中で
そこには、エメラルドのように四角に加工された【オリジン・オーブ】が輝いていた。
◇
「アイシアさん!胸にかけたオーブに集中なさいっ!抑え込むのよ、包み込むように、優しく!突き放すのではなく、受け入れるようにっ!」
まるで、過去に自分がそうしてきたかのように、セリスフィア皇女はアイシアに言葉を並べた。突如として起こってしまったアイシアの暴走に、アドバイスを掛けてくれる。
「うぅっ……お、抑え……こむっ」
次に皇女は、アイシアのすぐ後ろまで迫ったミーティアへ視線を送り。
「ミーティアさんだったわね。もし動けるなら彼女を支えてあげてっ……魔力を持たない彼女には、オーブの魔力波長は辛いはずよっ」
本来魔力を持たない一般人は、他者の魔力で酔ってしまうんだ。
吐き気や
「は、はいっ!」
(やっぱり彼女、【オリジン・オーブ】を所持していたのね……だからあの気配、地下で感じた共鳴も、リアちゃんじゃなくて、彼女だったんだっ)
内心で確信を得つつも、力を振り絞るように踏み出して、ミーティアはアイシアの背を支えた。
そして補助をするように、優しい水色の魔力の波を発生させる。
相殺しているんだ……アイシアの【オリジン・オーブ】が出す力強い不和を、自分の【オリジン・オーブ】の正しい魔力で。
「く、くそっ……俺はなんでこんな時になにも出来ないんだよっ!」
「悲観しないでミオ、あいにく
「え」
その言葉は後ろに。
俺が振り向くと、そこには女神が二人……立っていた。
「――やられたわね。主神の奴……あたしと一番相性のいい
「ア、アイズ!エリアルレーネ様も……!」
アイズはエリアルレーネに支えられるようにして、フラフラで立っていた。
地下から出て来て大丈夫なのかよ……それに、ああもう!色々と起き過ぎなんだよ!!
「セリスっ!ここで力を見せる意味……分かっていますね!――頼まみすよっ!?」
「はい!お任せを、エリアルレーネ様――ミーティアさん、私のオーブと波長を合わせて!」
「は、はい!……アイシア、ゆっくり、しっかり!」
「ぅ、うん……」
セリスフィア皇女が
その魔力は力が抜けるかと思う様なほど優しく、アイシアとミーティアの周囲を
それに合わせるように、ミーティアも右足に集中し始める。
「……」
凪のような魔力の波長。
「うん、いいわ……オーブの流れは分かるわね?そのまま深呼吸をするように、宝珠に魔力を返してあげて」
無言だが、しっかりと
濃い紫色の瞳は、魔力を放つオーブに集中され……目視できるほどに濃厚な魔力が、やがて――
「落ち着いてきた……これなら!」
魔力の波動が治まって来た。
突如始まったアイシアの、
そんな空虚な思いを抱えながらも、俺は二人の元へ歩んでいく。
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