9-51【視ていく者3】



ていく者3◇


 俺とミーティア、そしてアイシアは三人で教会へ向かう。

 アイシアはミーティアの隣に立ち、二人で何やら会話をしているが、俺は聞くのは失礼だと思って、必死にウィズに脳内会話をしかけた。


(なぁウィズ、アイシアのアレってさ……やっぱり俺との関係をリセットさせた感じだよな?)


『――少なくとも、許嫁いいなずけや婚約者と言った関係性を保ちたいと言うものには見えませんでした。ですが、どこか躊躇とまどいのような物があったのは事実だと思われます。しかし――』


(ああ、分かってる。ここで俺がアイシアとの関係を修復させようなら……全部終わる。だから気軽に行動は出来ないな)


『そうです。ご主人様の事です、一定の時間が経てば元通り……そんな生易しいものではありません』


 で、ですよね。


「――ミオ、そろそろ着くよ。色々と話したい事はあるけど、まずは教会。祭壇からみんな出て来たから……これからの事も話し合わないとね」


「……ん、ああ。そうだな」


 アイシアに普通に話しかけられるが、どうも緊張してしまう。


「ねぇミオ。ルーファウスくんの事で話さなきゃいけない事もあるの……私とジルにも、時間貰えるかな?村の人たちとの話し合いが終わってからでもいいから」


「ルーファウス……?別にいいけど、どうかしたのか?」


「うん。ちょっと彼の個人の問題でね」


「ルーファウスの問題?」


 ルーファウス・オル・コルセスカは、【テスラアルモニア公国】出身の一つ年上の少年で、赤髮で童顔の剣士だ。

 俺が負傷時に出会い、護衛として契約をしていて……だけど個人的には友人、ルーファウスもそう思ってくれていると思う。


 ミーティアとジルさん、そしてルーファウスの三人で村に来てる……はずだよな?

 ウィズだって何も言わなかったし。


『――直接聞いた方がよろしいと判断して、ミーティアからの報告をストップしていました』


「そう言う事か」


「そうね、ウィズもありがとう」


 歩き、二人でウィズと会話をする。

 傍から見れば単純に、俺とミーティアだけの会話だが。


「……あれ、アイシア?」


「どうした?」


 もうすぐ旧スクルーズ家……アイズの家に着くが、アイシアが止まっていた。


「……」


「アイシ……ア?」


 その紫色の瞳で、俺とミーティアを見る。

 輝き、怪しく光るその瞳は……異常な魔力・・を放っていた。

 魔力を持たない筈のアイシアが、まるでアイズのように。


「……ご、ごめん。ちょっと……疲れて」


 抑え込むように、なだめるように。

 アイシアは左手で両目をおおい、ゆっくりと深呼吸をし始める。


(ただ事じゃないな)

(そうね……でもどうすれば?)


 俺とミーティアはアイシアに寄り添い、様子を見ながら小声で話す。


 共通して【オリジン・オーブ】を持つ。

 ミーティアとリアの【オリジン・オーブ】は、俺とウィズが調整を施して害がないようにしつらえた。

 もしかしたら……アイシアが首からかけるそれも、調整さえ出来れば楽になるのかもしれない。


「アイシア――」


 そう思い、俺は【オリジン・オーブ】を少しだけ借りようとした。

 しかし、俺の意思に反するように……まるで意思を持つかのように、【オリジン・オーブ】は輝きを増すのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る