9-49【視ていく者1】



ていく者1◇


 アイシアがミーティアに頼みごとをした。

 それを頼むときのアイシアは、とても嬉しそうでもあり、そしてとても悲しそうにも見えた。


 一方でミーティアは、これで本当にいいのかと……何度もアイシアに確認をした。

 アイズはもう何も言わない。言えない。

 そのアイシアの決断は、今のアイズを不要としている言動だ。


 しかし、アイシアがアイズを蹴落とそうとしていると言う訳ではない。

 アイシアの能力――【代案される天運オルタナティブ・フォーチュン】がせる光景には、未来の世界に存在するアイズの姿だ。


 その時点で、アイズが消えることなく生きている事が分かる。

 だからアイシアは、女神と言う存在でなくなったとしても、アイズが救われると思ったのだろう。


 その決断は、既に誰にも止めることは出来ない。

 アイシアは……ミオの事を今も好きだろう。

 だが、一番に考えられるものではなくなっていた……あの時、自分がアイズのように成れるだろうかと考えた時点で、それが決定付けられたのだ。





 夜……雨が上がり、夜空に星がきらめくほど雲が明快に見える。

 村に戻る、ミオ・スクルーズとリア。


「リア、やっと着いたぞ……はぁ、疲れたな」


 リアをおぶったまま荷馬車をき、時間を掛けて買い物を終えたミオ。

 村の地下で、女性たちの間でどのような会話が行われたかを知る事もなく、疲労で顔を暗くする。


 ミオが声を掛けても、背中で眠るリア。

 だから起こすのは止めて、ミオは。


「ウィズ、ミーティアたちはもう着いてるよな?」


『――はい。現在こちらに向かっています』


 ウィズも制限が掛かる中、ミーティアに連絡を取ったらしい。

 連絡と言うよりは、報告に近いが。


「そうみた……――マジか」


 視野に入るのは、ミーティアと……アイシアだった。

 思わぬ組み合わせに本気で驚くミオは、自然と緊張した。


「……ミオ!!」


 小走りのミーティアと、その後ろをゆったり歩くアイシア。

 ミーティアは少し緊張、と言うか恥ずかしそうであり、アイシアは何故か満面の笑みだった。


「す、すまん!遅くなったっ!!」


 何故か謝ってしまう。

 正面にミーティア、アイシアはミオの横に立ち、リアを代わりに抱っこした。

 アイシアはその後離れて、何故かミーティアの後ろに。


「……?」

(なんだこの感覚、違和感?不信感?変な感じだ……)


 それは笑顔のアイシアの行動であり、正面で緊張するミーティアの赤面ぶりを見ての疑問だった。


「お、おかえりなさい、ミオ!」


「え、ええ?あーうん。ただいま……ってどうしたんだよティア、なんか変だぞ?」


「――分かってるの!自覚アリだから気にしないで!?」


 目がグルグルと回っていそうな、そんな混乱した顔でそう叫ぶミーティア。

 ミオは余計に戸惑う。視線はミーティアとアイシアを行ったり来たりだった。

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