9-46【二つのオーブ4】



◇二つのオーブ4◇


 アイシアが戻ってきて、イリアと二人で紅茶を入れる。

 因みに茶器はミオが【無限むげん】で形だけを整えた、急場しのぎのものね。


「それでは私も、一度帰りますね」


「ええ、さっさと戻んなさい」


 もう来るなとは言わないのね。


「じゃあ明日また来ますね、アイズ♪」


「……」


 無視してる……いいのそれで。

 けれど、アイズはエリアルレーネ様の姿を最後まで見ていた。

 見えなくなるまで、音が聞こえなくなるまで。


「ん……この気配」


「ミーティア?どしたのよ、急に」


「いえ……上の気配がちょっと。なんだろう……この村に来てから鋭敏えいびんになっている気がするの」


 肌を擦るミーティア。

 危ない感じはないけれど……せいぜいエリアルレーネ様を迎えに来た、うるさい男の気配くらいしかないわね。

 それが危ないと言うのなら、縦にうなずくしかないけどね。


「――【オリジン・オーブ】の共鳴よ」


「「え?」」


 アイズが口にする。

 返事をしたのは……その所持者である二人。

 青の【オリジン・オーブ】と紫の【オリジン・オーブ】、ミーティアとアイシア。

 そう言えば、リアちゃんも赤の【オリジン・オーブ】を持ってるのよね。


「次期アイズレーンを選別するためのアイテム、女神の代替品だいたいひんであるEYE’Sアイズの証、それが【オリジン・オーブ】よ。まぁミーティアのオーブはミオがいじったせいで、証どころじゃなくなってるけど」


「そうなの?」


「う、うん。一度死にそうになって……その時にミオが」


 か、軽く言うわね。あの時は心の底からダメだと、もうお終いだって思ったわよ。

 でも、自分でそう取れるのならいいのかしら。


「あ!もしかして、その足?」


「分かるの?」


 アイシアはしゃがんで、ミーティアの足をまじまじと観察する。

 ミーティアは少し恥ずかしそうにしながらも、黙って見せていた。


「本当だ、同じオーブ。でも……流れ?が違う気がするかな」


「――その通りよ。ミーティアのオーブは、もうEYE’Sアイズとしての機能を失ってる。本来はその時点で消滅するはずなんだけどね……ミオの奴、なにやったのよ」


 あの時、能力のウィズと会話をしていた。

 その際にはアイズの事も言ってた気がするけど、必死だったから朧気おぼろげだわ。


「おそらくだけど、もう代替品だいたいひんEYE’Sアイズは少ないわ。全部で六人いるはずだけど、一人はミーティアのオーブが使用できなくなった時点でロスト。後はアイシアとリア……あたしがこっちに来る時に落としたオーブを、もしEYE’Sアイズが拾ってるとしたら、この村に来るわよ……黙っててもね」


 資格を失ったオーブでも、共鳴はするのね。

 それがいいのか悪いのかは、私には分からないけど。


「そうなのね……でも私は、この力を得て、ミオの為に何かできると思ったわ。隣に立って、共に歩んでいく事で……彼を支えたいと思った」


「……」


 ミーティアは、まるでアイシア一人に言うように言葉を並べる。

 アイシアも黙って聞いているが……ふと、アイシアは――笑った。

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