9-45【二つのオーブ3】



◇二つのオーブ3◇


 エリアルレーネ様がここ……聖堂に来たという事は、アイズは部屋で寝てるかぐだっていると予測できる。

 エリアルレーネ様の事を苦手そうにしていたし、何度も喧嘩というか、言い合いをしていたから。


「エリアルレーネ様、アイズレーン様は部屋に?」


「ええクラウ。【神命与奪しんめいよだつの儀】を無理矢……交渉の末、行いました」


 無理矢理って言いそうになったわね。

 でもそう……そのなんとかって儀式のおかげで、アイズが延命されたのは事実。

 私とミオの二人は、恩人であるエリアルレーネ様に敵意を出せない。

 出すつもりは毛頭ないのだけどね。


「アイズさん、あ、いえアイズレーン様は……」


 ミーティアが心配そうに聞く。

 しかしエリアルレーネ様はそんな心配を蹴とばすように。


「部屋で一人、いきどおりを見せています、主に私にっ。うふふっ」


 笑って言えるの凄いわね、自分の事なのに。


「それじゃあ、行っても平気なのですか?一応……アイシアも後で来ることになってますけど」


「構いませんよ。あの子も人が多い方が紛れるでしょうし、なにより自分の庇護の子たちが居てくれれば、女神は癒されるのですから」


「分かりました。それじゃ行きましょうミーティア、ジルも……いつまで頭下げてるのよ。イリア、手伝って」


「はいっ」


 イリアと二人、ジルを無理矢理立ち上がらせて教会の奥へ。

 改めてだけど、本当によくできた教会ね……作りが綺麗だし、地下だって言うのに明るい。謎のパワー。


「入りますよー」


 ガチャリとエリアルレーネ様が扉を開ける。

 もう完全に我が物顔だった。


「……よく来たわね、ミーティアにジルリーネ」


「アイズレーン様……ご無事で何よりですっ」


 ジルは、アイズがいた女神の生まれ変わりだって言う話を信じていた。

 それが本当だったんだから、喜びも一入ひとしおなのかもね。


 私は言う。


「どう?体調は」


「さいっあくよ。その女がいるからね」


「あらら、嫌われましたー……クラウ、こんな聞き分けの悪い女神より、私に鞍替えしませんかー?今ならお安くしておきますよ?」


「え」


 そんなことが可能なの?


「馬鹿言ってんじゃないわよエリア。クラウもミオもあたしの子よ、渡すわけないでしょ……ざけんな」


 エリアルレーネ様は「もうー冗談じゃない」と笑っているが、アイズはガチギレっぽかった。


「もうすぐミオも帰ってくると思うけど、どうする?色々と話さなければいけない事、あるわよね……?」


「そーね。村人たちの祭壇での学びも終わったようだし、キリがいい」


 祭壇って、更に地下のよね。

 村人の避難場所になっていた所。


 それに学びって、いったい何だって言うのかしら。

 と、そんな私の考えが透けたのか、エリアルレーネ様が。


「うふふ……祭壇と言うのは大仰ですが、女神を学ぶ場所と考えて下さい。この村は永らく放置されて、女神の村だという事も忘れ去られていました。長い年月で、女神の事を知らないと言うのは、おかしな事でしょう?」


「女神の名を冠する村なのに、村人はその女神を知らないって事ですね。確かにそれはちょっと」


「聞いただけなら酷い話ですね……」


 私とイリアが言う。

 そんなタイミングで……扉がノックされ。


「――失礼します」


 アイシアが戻って来たようね。

 後は、ミオが帰ってくるのを待つだけ……大丈夫よね、ミーティアとアイシアの二人。

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