9-44【二つのオーブ2】



◇二つのオーブ2◇


 教会に入ると、真っ先に女神が出迎えてくれた。

 予想外過ぎて言葉が出ないわよ……エリアルレーネ様。


「あら、おかえりなさい。クラウ……だったわよね?」


「は、はい。エリアルレーネ様」


 もう後光が見えるのよこの女神様は。

 アイズにも分けてあげて欲しい……いえ、実際やってくれているのよね、今まさに。


「さてと、それじゃあそちらは?」


 エリアルレーネ様は私の後ろの二人に注視する。


「――お初にお目にかかります、わたしはエルフ族の王女、ジルリーネ・エレリア・リル・エルフィンと申します。運命の女神……エリアルレーネ様」


 膝を着き、こうべを垂れて挨拶をするジル。

 本名なっがいわね。


「わ、私はミーティアと申します。家名は……ネビュラグレイシャーとなります」


 ネ、ネビユらぐれ……なに?

 ミーティアもジルを習って同じくひざまずくが、私はクロスヴァーデンではなくなっている家名の方が気になったのだけど。


「……そうですか、エルフの加護を得たのですね、貴女あなたは」


「はい」


「それに足る実力と信頼を、この娘は持っています……それが女王の御心みこころでした」


 えっと……話に付いていけないのだけれど。

 ミーティアがエルフ族の加護?を受けて家名が変わった?

 ネビユ……なんとかって、それが家の名前でいいの?

 むぅ……異世界分からない。


「クラウ、別に深く考えずともいいのですよ?」


「あ、すみませんエリアルレーネ様」


 エリアルレーネ様は私に説明してくれる。

 やっぱりアイズよりは全然女神っぽいわよ……私はアイズの適当さもズボラさも嫌いじゃないけど。自分がズボラだからかしら。


「名と言うものは、別に家の名を語るものだけではないのです。その者を表す、表現するための言葉や歴史、それが名となり体となる。ミーティア・ネビュラグレイシャー……とても良い名です。青の【オリジン・オーブ】の所持者にふさわしいですね」


「あ、ありがとうございます!!」


 ミーティアはもう平伏しちゃってるから。

 でもそうか、ミーティアは【オリジン・オーブ】をその身に宿している。

 それは大きな力で、それが名となった。

 名は力を高め、更に力を授ける……あれ、ミーティアってもしかして。


「――ミーティア、強くなった?」


「ええ!?ど、どうなのかしら……でも前よりは確かに、動けるし魔力の減りも少ない気がするし、物体の弓も必要ないから……矢も要らないし」


 いやいや、明らかに強くなっているわよ。

 【超越ちょうえつ】した私が言うんだから。

 と言っても、こうやってエリアルレーネ様に聞くまで気付かなかったけど。


 分かってるわよ、それがアイズレーンの転生者だって言いたいんでしょ。

 自覚してるわよ……残念ながらね。


 あれ、でもそう言えば……ミーティアが【オリジン・オーブ】を持っていること、いつ知ったのかしら、エリアルレーネ様は。

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