9-42【到着4】
◇到着4◇
ミーティアたちを村に引き入れた私とアイシア。
馬車には沢山の荷物が乗せられていて、村に来るまでに果物やキノコ、山菜などを採って来てくれたらしい、ありがたい事ね。
「本当に燃えてしまったのね……」
「ええ。魔法による火矢のせいで、土壌も汚染されてるらしいから……農業も難しいかもって」
「――なっ!!くっ……許すまじ王国軍っっ」
ジルが一番怒ってるじゃない。
野菜が食べられないからでしょう?
「でも、人は生きています」
「アイシア?」
「……そうね、それが一番だわ」
アイシアの言う通り、村人に被害が出なかった事が大きい。
小さな怪我や体調不良、精神的なショックはあるけれど……それでも生きている。
「ああ、その通りだよ。しかしこんな事を言うのはあれだが、昔を思い出したな」
「……あ」
ジルの言葉に、私も前に言われた事を思い出す。
エルフ族は、
その悲しい過去を思い出したのね。
「そ……そう言えばエルフの里に行ったんだったわよね」
あ~……わざとらしかったかも知れないぃ。
ミオが万全な状態になれたのも、そのおかげだと聞いていたからか、つい困った時用のワードを口にしてしまった。
「え、ええ。自然豊かで素晴らしい場所だったわよ……ミオが言っていたけど、武家屋敷?みたいな」
「へ、へぇ……是非とも私も行ってみたいわね」
「ふふっ、あたしも行きたいな」
「うむ、落ち着いたら皆で行こうか……女王も喜ぶさ」
アイシアの笑顔にジルも笑顔で答えた。
私は多分引き攣ってた……情けない。
「そう言えば、ミオはどうした?お嬢様が来たのだし、一番に駆け付けるものだと思ったが」
「あ……ジ、ジルに言うの忘れてた!彼の事があったから、つい……」
彼?
「ああ、そうでしたか。あ奴の事は、ミオに直接言うとしましょう……きっと受け入れますよ」
あ奴?
「誰かいたの?……あ。そう言えば、友達が出来たとか言ってたわねミオの奴」
それが彼?あ奴?男よね?
でも馬車にはいない……何かあったのかしら。
「そうね、とてもいい人よ。でも事情があって別れて……でもミオとの約束は守ってくれたから」
ミーティアがそう言って笑う。
変な心配は要らなさそうだけど、本当に男でしょうね?
「そ。よくは分からないけれど、ミーティアがそう言うなら大丈夫でしょ」
会話をしながら、二人を教会のある北西部……アイズの家まで案内し終わる。
元は自分の生家、スクルーズ家の家……改修してモダンな感じになっていたが、その影も無く焼けてしまい、今は地下に通じる長い階段があるだけ。
「――アイズ!聞こえていたら、もしくは見えていたら許可を。ミーティアとジルリーネが来てくれたわっ!」
この地下には、女神の許可を得た人物しか侵入することは出来ない。
私とミオはアイズの転生者だから、問答無用で入れるけれど。
他の村人や他の転生者は女神の許可が必須だ。
ただし、今は。
『――どうぞ、許可します』
「あれ、今の声……って」
そう、ミーティアが戸惑うように。
今この村には、女神の許可が二通りあるのだ。
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