9-41【到着3】



◇到着3◇


 そろそろ時間だと思い、アイシアをともなって東門前に来たのはいい……いいのだけれど、開幕から驚かされることになるなんて誰が思うのよ。

 どうして皇女様が、まるで門番のように立ち、ミーティアとジルを迎えてたのか。


「こ――」


 私、クラウが声を掛けようとした所。

 皇女様は私にしか見えない様に、指を唇に当てた。

 喋るな……そういう意味だろう。


「待っていたわスクルーズさん。お客様は歓迎してよかったのよね?お仲間なのでしょう……?」


「え、ええ……感謝します?」


「ふふふっ」


 戸惑いすぎて疑問形になってしまったじゃない。

 笑わないでよ、皇女様。


「――クラウっ!」


「なに……――って!」


 ぼふっと、柔らかいものに抱きつかれた。


「むぎゅぅ!――ミ、ミーティアっ!く、苦しいでしょ!」


 寒さと氷の能力によって冷えた身体。中途半端に込められた力は震えていて、抱きつかれて痛い、それでも届くのは……温かい気持ちだった。


「ウィズに聞いて、皆が無事なのは分かってたけど……この村は私にとっても大事な場所だし、ミオが一人で向かって……遠くに赤色の空が見えたら、心配になるでしょ……!」


「あーうん。そう、そうよね……ありがとう」


 泣きそうになっているミーティア。

 ウィズとか言う能力の声を、ミオの魔力を含んだ【オリジン・オーブ】というアイテムを通じて聞き取る事が出来るミーティア。

 ウィズももう少し詳細に教えておけと言いたくなるわね。


 私はミーティアの背中をポンポンと叩いてなだめる。

 周りにも人がいるし、身長差で苦しいし……気恥ずかしいしね。

 ジルも久しぶりだけど「やれやれ」って感じで馬車に向かっていた。


「よく来てくれたわ、それにミオを送り出してくれて……流石ねミーティア。なんだか、恋人として板について来たみたいじゃない?」


「……もう、やめてよ恥ずかしい」


 わざと・・・そう言う。

 言う理由あるからね……後ろに。

 私について来た、アイシアがここに来た理由だもの。


「ミーティア。久しぶりだね……」


「アイシア。うん……そうね」


 微妙に気まずそうね、当たり前だけど。

 気持ちは分かるけれど、どちらか言うとミーティアの方が気を遣っている感がある気がする。


「……それじゃあ村に行きましょう。住居は九割が燃えてなくなっているけど、アイズが用意した避難所があるから、そこに皆いるの」


「そ、そうなんだ。じゃあおねがいしようかな……ジルっ」


「はいお嬢様……――おいクラウ、あの黒服たちの事……後で問うからな」


「……」


 ちょ、ちょっと!圧をかけないでよジル。

 でも、もしかしてジルは勘付いてるんじゃ?

 ジルは知識も広いし、エルフならではの長年の見聞けんぶんがあるから、もしかしたら帝国の皇女様を知っていても、なんら不思議ではないけれど。


「では私たちは拠点に戻りますので、何かあれば一報ください……では」


 そう笑顔で言い残して、皇女様はそそくさと去っていく。

 まるで悟られるのを嫌がるように……って、あれ……ライネの肩が落ちてるけど、え?なにかあった?

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