9-21【地球という世界】+世界設定3



◇地球という世界◇


 地球の日本と言う国で、多くの転生者が生まれた。

 天命をまっとうし、女神に選別されて異世界に生まれ変わる。

 多くの日本人がそうであるが……二人、特別な選別をされた日本人がいた。


 武邑たけむらみお漆間うるま星那せいな

 寿命ではなく、殺害という方法で天命を失った二人は……【女神アイズレーン】によって選ばれた。


 武邑たけむらみおは、秋葉原と言う街に買い物に出たその日に、通り魔の女性……少女に襲われた。

 理由は、ターゲットの目の前にいたからという……邪魔者扱いされての事だった。


 自己中心的な行動に命を奪われ、武邑たけむらみおは転生した。

 【女神アイズレーン】はその青年に……全ての転生の特典ギフトをつぎ込むと言うミスを犯し、これによって新しい転生者は生まれなくなった。


 しかし運がいいのか悪いのか、漆間うるま星那せいなが絞殺により命を落とした時、異世界では偶然にも【クラウソラス】を持った人物が命を落とした。

 そのおかげで、漆間うるま星那せいなは転生が可能だったのだ。


 二人は同じ人物に殺害されている。

 仙道せんどう紫月しづき……それがその犯人の名前だ。

 したっていた男性に裏切られ、その男を殺すために実行した計画。

 ただ通行の邪魔だった……それだけで殺されたみお

 紫月しづきは事件が大きくなったことを考えて、その場から逃亡している。


 本来の目的である男性の殺害は叶わなくなった。

 だから余計に、邪魔だった男……みおに指針が傾いた。

 追い打ちを掛けてやろうと、近くの大学病院や遺体が安置されそうなところを探し、夜には辿り着いた。


 そしてそこで監察医として働いていたのが、星那せいなだ。

 紫月しづきは外に出て来た星那せいなに声を掛け……その匂い・・からみおの居場所だと確信し……そして星那せいなをも殺害した。

 自暴自棄なのか、それとも悪意に満ちた本能なのか……しかし遺体安置所に辿り着いた紫月しづきは、直前で刑事に囲まれる。


 刃物を持っている。更に直前にも一人の女性を殺害している事から、刑事たちは既に拳銃を構えていた。

 しかし意に介さず、紫月しづきは抵抗した……そうなれば当然、撃たれる。

 死の直前、紫月しづきは安置台に眠る遺体……みおに触れた。


 そうして無理矢理、異世界に旅立ったのだ。

 神の御業である転生術ではなく、自らの意思で……その身勝手な復讐心を持って。





「……」


 何を見せられたのだろう。

 今の光景は、この世界ではない別のものだった。それだけは分かる。

 そして、命を失ったその二人は……現在膝枕にて眠る二人の少年少女だと、その光景を見せられた張本人、アイシアは悟った。


「……」


 殺されて、ここにいる。

 だから二人は、村の皆がそうならないように守ってくれるんだと思った。

 人一倍命の重さを知っているからこそ、そのとうとさを守る。

 家族、友人、恋人、関わりのない人でさえ、命を賭して戦い、傷付き、そうしながらも必死になって助けてくれる二人。


「二人は知り合いだったんだね」


 全てではないが、アイシアがた光景はそれを示唆する。

 学友である二人は、大人になって再会する……監察医とご遺体という形で。

 そして同じ犯人に殺害され、今世で姉弟として生まれ変わったのだ。


「……あたしも手伝えるのかな」


 二人の髪を撫でながら、アイシアは思う。

 女神の代替品である自分が、この二人の力になれるのか……と。


「――いやぁ~すっごいな、日本ってのは!!」


「!!……え?」


 アイシアが微睡まどろみから完全に覚醒すると、目の前に男性が立っていた。

 目慣れない黒髪の、清々しいほどの満面の笑みを浮かべて。




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【澪から始まる】世界設定3。


【異世界レドゥーム・アギラーセ】。

 地球によく似た惑星であり、多種多様な種族が存在する異世界である。

 魔力などの不思議な力があり、魔物が存在しているファンタジーな世界。

 この世界の成り立ちは数千年前、とある国の王が、異なる世界から他種族を招いたことで種族が大幅に増えて、共存するようになったからだ。

 エルフ、獣人、精霊、天使(天族)に悪魔(魔族)、果ては魔王まで。その中には日本人もいたとか。

 元のこの世界には、人間族しか存在していない。

 長い年月と、各々の努力と研鑽の成果が、この多種族が共存する異世界なのだから。

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