8-95【罪を断つ者12】



◇罪を断つ者12◇


 ドン!ドン!ドドン!!

 ズーン!……ゴゴゴ……!


「くっそ、むやみやたらに狙って来て!ウィズ、飛んできた木の数と方向的に、触手は八本だな!タコかよ!!」


『【触手テンタクル】の正式名称は――touchタッチtentacleテンタクルofオブkrakenクラーケンですので、イカの可能性もありますが……』


「どっちでもいいわ!!迎撃するぞっ!【光煉華こうれんか】、行けっ!!」


 ウィズの解説にツッコミを入れて、俺は【極光きょっこう】と【煉華れんげ】の複合技――【光煉華こうれんか】を使う。

 赤と白の光球が宙に舞い、飛んでくる木々や大岩を迎撃する。


 ドドドドド!


「あははっ!やっぱり坊やは面白いわね!どんな研究材料よりも楽しめそう!」


「うるさい!黙れ!!」


 【光煉華こうれんか】は木々に穴を開ける。

 無数に開けられた穴は繋がり、やがて砕ける。

 それは岩も同じで、【光煉華こうれんか】の熱量には岩も耐えられない。


「そのまま聖女をっ!」


 右腕を振って、浮いている光球を向ける。

 自由に動かせるファ○ネルのように使えたらいいのに。


「あら危ない。【魔障壁マ・プロテク】!!」


「なっ!」


 それはジルさんと同じ魔法だった。

 魔法の板、点で防御する……範囲は狭いが防御力の高い魔法だ。


「お、多いんだって!」


 その魔法が、聖女のたった一言で……何枚も展開されていた。

 数枚じゃ利かない、何十と言う数だった。


「さぁ、防ぎましょうかっ!」


 俺は移動をする。

 走りながら聖女の動きを見つつ、触手が投げてくる大木を避けて。


 スライディングで滑り込み、そのまま【煉華れんげ】の炎をまき散らす。

 森に火が回る事すら覚悟のうえで放ったが。


「むーだ!」


 先程の【魔防衣マ・ヴェルマ】とか言う魔法が、炎を防ぎやがる。

 面での攻撃は衣が、点での攻撃は壁が防ぐ……万全って事かよ!


「ならこれならどうだっ!【紫電しでん】っ!」


 地面に稲妻を走らせて俺は消える。

 いきおいだけなら弾丸を超えるぞ、どう防ぐ!


「――ふっ!!」


 バギャッ!ギャギャギャッ!!


「こんのっ……俺の蹴りをっ!」


 【紫電しでん】での蹴りを、聖女は防いだ。

 持っていた杖で。


 俺は決める事が出来なく、そのままいきおいを無くして着地。

 すぐさま連撃に出ようとしたが、見えない触手が……


「んがっっ!!」


 いてぇ……もろあごに入った。

 触手の打撃力は、【無限むげん】での【石の鉄槌ストーンハンマー】クラスの威力だ。

 これは痛いって。


「がっ……ぐっ、かはっ!」


 背中、肩、足……何か所か追撃受けたな。

 全身ににぶい痛み、打撲とかそこらへんか……ならまだマシだ。


「へぇ、まだ立つのねぇ。折れない心ってのも、厄介なものだわ」


 そう簡単に折れて堪るかよ。

 守るって約束したからな、村を守るって、家族を守るって。

 なにより……アイシアにあんな事を言わせた俺が、こんな所で負けて……無様な姿をさらす訳にはいかない。


 戻るんだ。ただいまを言う為に。

 アイシアは俺を送り出してくれた、それは戻って来いと、勝って来いという事だ。

 いってらっしゃいは、おかえりなさいを言う為の言葉だって、俺はそう思う。


 だから立つさ、何度でも……お前を倒す為ならば。

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