8-91【罪を断つ者8】



◇罪を断つ者8◇


 【豊穣の村アイズレーン】を舞台にした、国と国とが交わる国境の戦い。

 最終盤……残る大きな反応は二つ、一つは改造された、王国の人間と予想されるが、この違和感はなんだ……そしてもう一つは最大級にして、威圧バリバリの存在感を示す、背筋が凍りそうなほどの圧力を持つ、そんな……まさしく異常。


 聖女レフィル・ブリストラーダだろう。


「……来た」


「だな」


「……一人?」


 あの怪物を人間としてとらえるのなら二人だが。

 けどそれはもう、出来ないんだろうな。


「――随分と派手にやってくれたんですのねぇ……こんな田舎の辺境に、まさか木偶でく数百体を倒す戦力があるだなんて……予想外ですわ、うふふ」


 デカブツである改造された兵士と森の木々に隠れ、その姿は全身を見れない。

 だが分かる、この女こそが聖女と呼ばれる転生者……レフィル・ブリストラーダ。


「あんたが王国の聖女か。横にいるのは……あんたの最高傑作って事でいいのかな?」


 戦って来たどの改造兵士よりも強い、最大級の反応。

 それが聖女の横に並んでいる。

 命令で動くんだろうが、どうして最初の四体と同時に動かさなかった?


「最高傑作ぅ?……あはは、坊や……甘く見ないで貰えるかしら、こんなもの・・・・・、いくらでも用意できるのよ、アタシは」


 こんなものだと?

 人の原型すら無くされて、声も出せず、うめくことでしか示せない。

 無理矢理操られて、戦わさせられて、身勝手に殺される。

 そんな風にしたのは誰だっていうんだ。


「なら、どうしてそれを用意しないんだ?いくらでも用意できるのなら、それこそ死なない兵士のように、数百でもその力を持った人たちを用意したらいい」


「……必要ないでしょう?こんな村には、だって……今回は導入実験なんだもの、もったいないじゃない?たかが小さな農村、どこにでもあるわ。王国にだってこの帝国にだって、お隣の小国にすら、数え切れないほど存在しているのだから……そしてその村々に、アタシが必要とする――素材が落ちてるんですものっ」


 素材……それはお前が実験をする為の、村人の事か。

 俺たちの事かよっ!!


「そんなたかがド田舎の村でも、そこで生きている人たちはたった一つだ。同じ人なんてない、ましてやあんたのような人間が、玩具おもちゃにしていいものじゃない!!」


 命は一つだ。

 もてあそばれるために産まれた人間なんて、一人もいない。

 こんな事を許しちゃいけない……絶対に、この罪を断ち切る。

 この女を、のさばらせる訳にはいかない……ここで倒す、倒さなければ、いずれ最悪の存在になってしまう。


「はっ!まるで馬鹿みたいな事を言う坊やだこと……この世界は玩具おもちゃよ、ゲームのようなものなのよ!」


 ゲーム……だと?

 この世界を、お前の遊び場にするな!!


「生きてる人間を、お前が好きにしていい訳ないだろっ!!ゲームなんかじゃない、生きてるんだ!この世界の人間も、動物も!草木や空も、水も、全部本物だ!!」


「あははっ!神が作った世界は、全部玩具おもちゃでしょうにっ!」


 ゆがんでいる。

 この女は聖女なんかじゃない……アイズの言うように、悪女だ。


「……倒す。お前の好きにはさせない、村も世界も、絶対に好きになんかさせるか!!」


 転生者には色々いるさ。

 お前のように、この世界をゲームのようにとらえる奴もいるんだろう。

 生きていることすらゲームとして考えて……殺しはレベル上げ、命を奪う事すらいとわない。


 だけど、この世界で必死に生きて……人生を変えた人間だっている。

 前世で殺されて、二度目の人生。

 何一つ持っていなかった物を、俺はこの世界で手に入れる事が出来た。


 それを……お前の玩具おもちゃになんかさせるかよ!!

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