8-90【罪を断つ者7】



◇罪を断つ者7◇


 残りは二体だ。

 一体は俺が、もう一体はユキナリに任せるとして。


「――【無限むげん】」


 これこそが俺の十八番おはこ

 地面を操作して、四方八方から針を生み出し、怪物を目指して突き刺す。


 え?殴らせろて言ってたのはどうしたって?

 もう二発殴ってスッキリ……はしてないけど、とりあえずはいいよ。


 ドドドッ――と、脚部を貫かれる怪物。

 足が異常にデカい、蹴られたり踏まれたりしたらヤバそうな、そんな怪物だ。

 だからまず移動を封じる。両の脚部にそれぞれ十数ヶ所、【石の槍ストーンスピア】を突き刺して、内部で破裂させるようにして更に変形、抜けない様に強固にする。


「これで動けねぇだろ、後は的にでもなってろっ!!」


 今度は【豊穣ほうじょう】だ。

 落ちている木々や枯れた葉っぱを異常成長させて、槍や鞭のように叩く。

 最大の特徴は、【豊穣ほうじょう】にてバットステータス……バステを与えられる事だ。

 毒効果や衰弱効果のある葉っぱへと、強制的に進化させて。


「す、すごい……」


 ライネがおどろいているが、ユキナリも大概だと思うぞ俺は。

 俺には身体変化の能力は無いし、見た目を変身させるユキナリや、背中に翼を生やせるクラウ姉さんの能力も凄いと思うけどな。


「【煉華れんげ】……【極光きょっこう】!」


 高威力のこれらの能力も、魔力を抑えればこう言う事も出来ると気付いた。


 赤と白の球体が、俺の周囲に無数に溢れ出す。

 【煉華れんげ】と【極光きょっこう】の放出される魔力を、凝縮させたものだ。

 これなら【煉華れんげ】でも周囲に被害が出ないだろ。

 【極光きょっこう】は、本来纏うタイプの能力だけど、これは応用ってやつだ。

 能力の応用……リディオルフに出来て、俺に出来ない訳ないだろうが。


「行けっ!!【光煉華こうれんか】!」


 二色の球体は俺の自由意志ではないが、ブーストさせてやれば自動的に敵に向かう。こいつは使えるって思ったよ。


 ドドドド、ガガガガ……!!


「ぐおぉぉおお!うぐぅっ……!」


 言葉は話さない。

 しかしうめき声を上げて、怪物は上半身をぐったりとさせる。

 下半身は【無限むげん】で固定してるしな。


「た、倒したんですか?……え?こんなにあっけなく??」


 戸惑とまどうライネ。

 そうなるだろうね。


「そう言う事。もう魔法?能力?……解除してもいいよ、ありがとな!」


 そう言い切れるのは、向うで戦うユキナリも……終わったと気付いたから。


「終わったぞー……ってミオっち早えな!」


 ユキナリは、巨椀の怪物を……まさかの指一本一本をへし折って倒していた。

 六本の魔物の腕で強引に空中から襲い掛かり、掴み、力任せに。

 攻撃法をなくした巨椀の怪物は、最後にはユキナリの六本の腕による超連打の拳によって、消滅していたよ……えぐい。


「……さて。残るは一体だ」


 その反応が動き出す。

 ゆっくりと、ゆっくりと進んで……俺たちの方へ向かってくる。

 更には、その反応と共にこちらへ向かう、もう一つの反応。

 最大級に大きな魔力の反応は……おそらく聖女だ。

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