8-87【罪を断つ者4】



◇罪を断つ者4◇


 感知阻害かんちそがいの魔法が掛けられ、その隙に村に侵入された。

 これは明らかな俺たちのミスだが、幸いにも村人の避難は完了している。

 あの教会には、【女神アイズレーン】の加護を受けた者……つまりはこの村の人間しか入ることは出来ない。

 例外はアイズ本人が認める事だが、それが起きる訳はない。


「姉さん。頼めるか……?」


 【転移てんい】で向かえば早いが、こっちには強力な魔力反応もある。

 これは北からだ。だから疲弊ひへいしたクラウ姉さんには、村に戻って侵入した奴らを撃破して欲しい。


「いいけど、平気なの?あっち」


 姉さんはあごで北を向ける。

 【感知かんち】には物凄い魔力量の反応が、今も残っている。

 数は五体だ。


「大丈夫。こいつもライネさんもいるし」


「おう!ミオっちと一緒に戦えるとはなぁ……あ!これが終わったら――」


「い・や・だ」


 「ちぇ~」とユキナリは分かりやすく落ち込む。

 こいつ、まだ俺と戦いたがってんのかよ。


「ミオくん、申し訳ありませんこのボケナ……先輩が。それと私のことは呼び捨てで構いません、年も……近いですよね?」


「ん、ああ……今年で十六だね」


「あ、同い年です!私は先月十六になりましたっ!」


「お、じゃあ同級生・・・だ」


 その言葉に、耳をピクリと反応させる誰かさん。


「――じゃあ行くわよっ!!」


 ドッ――!!と、背中を蹴られた。


「なんで?」


「……フンっ……知らないわよ、バカ」


 つんけんし出して、クラウ姉さんは門へ入って行く。

 なんで蹴られたんだよ、俺。


「ま、まぁいいや。それじゃあライネ、ユキナリも。悪いけど、怪物退治に付き合ってくれ」


 その徐々に大きくなる反応は、確実に俺たちが止めなければならない。

 例え頭を下げることになっても、ここはこの二人を戦力にするさ。


「任せろって!」

「分かりました。これもいい経験になります」


 いい返事を貰い、俺はコクリとうなずき構える。

 【極光きょっこう】と【電極でんきょく】を腕に纏い、脚部には【紫電しでん】の稲妻を発生させる。

 さながら電流使いだな、今の俺。


「【アスラハンズ】!【グリフォンネイル】!……あ~ヤバい。そろそろ魔力ヤバいってミオっち!」


「知らねぇよ、節約しろ!」


 しかしここまでこの門を守ってくれていた事は事実。

 暇になったら、模擬戦くらいしてやってもいいかもな。


「【アロンダイト】……お願いねっ。【遮光しゃこうのカーテン】!!」


「お~!これって……閉じたのか、門から向こうをっ!」


「はい。ですので私は、防御に専念させていただきます。しっかり守ってくださいね」


 頼もしいけど、そのセリフは先輩に言ってあげてね?


 【遮光しゃこうのカーテン】は、ライネさんが動けなくなるのか。

 それでも、敵の数が減った以上は有効だ。残りはデカい反応が五つ、俺とユキナリで撃破すればいい。


「それじゃあ……来るぞっ!!」


「おう!」

「はいっ!!」


 この村を守る、最後の戦いだ。

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