8-86【罪を断つ者3】



◇罪を断つ者3◇


「――【雷光放電斉射ライトニングブラスター】ーーーーっ!!」


 覚えた、いや……名付けられたばかりの新技を連発するミオ。

 これではまるで矢の迎撃技。しかし雷光は矢に直撃すると、そのまま中継点となって射撃者に落雷として向かっている。矢をればるほど、ダメージを与える技だった。


「そろそろゾンビ兵がいなくなるわね。そっちはどう、ライネさん!」


「こちらも終わります……はぁぁぁ!!」


 ザシュッ!!と、意思があるように見られる騎士を斬り伏せるライネ。

 ユキナリも、魔物の腕で兵士を潰す。


「おっしゃあ!終わりー!」


「これで……全部?」


 周囲を確認して、クラウがミオに言う。


「いや……魔術師がいない。多分撤退したかな」


「撤退?他の兵士と違って理性があるって事?」


「もしくはそう指示されたか、かな」


 ミオが苦笑いしながら答える。


「逃げたって事は、あの兵士たちは生きてるのかな?」


「どうかしら。死なない兵士と違って、痛みはあるようだし。もしかしたら」


 可能性はある。

 弓兵や魔術師は後方にしかいない。

 だから【奇跡きせき】による強化も、深い所までは行っていないのではないかと。


「もし自由意志があるなら、殺したくは無いけど……でも、ダメなら素直にやるよ。それでいいかな、姉さん」


「……うん。いいわ」


 クラウは既に何百という数を斬っている。

 たった一日でだ。未来永劫つぐなえる罪ではない数字だと自覚して、クラウは肩を落とす。


「姉さん。あまり気にしないで……って言うのは無理だろうけど、でもここは異世界だ。少なくとも、自衛で殺人をした場合は罪じゃない……そんな法があったよな?」


「え、俺??」


 ミオは【サディオーラス帝国】の法を確認させるために見たが、相手を間違えた。

 直ぐにライネに視線を移し。視線で問う。


「……そうですね。確かに自衛での殺人は認められています。今回は特に、相手が侵攻をくわだてていると言う、絶対的な理由がありますから」


 その言葉に、ほんの少しだけ罪悪感が緩んだ。

 しかし、決して消える訳ではないと、ミオもクラウも自覚している。


「守る為さ。誰もとがめないよ、そう言う事なら……ただし、王国以外はね」


「そう、ね」


「今件は完全に【リードンセルク王国】の暴挙です。私たちも国に報告済みですから、しばらくしたら……帝都【カリオンデルサ】から使者が来ますので、その際はよろしくお願いします」


 ぺこりとミオに頭を下げるライネ。

 ただし、「皇女セリスフィア様が来るとは言っていない」だが。


『――ご主人様。強力な魔力反応です』


「「「!!」」」


「うおっ!!マジかっ……」


 ミオ、クラウ、ライネは、その魔力の反応におどろいていたが。

 どうやらユキナリだけは違った。


「どうした?」


「ミオっち……感知阻害かんちそがいの魔法が掛けられてる。反応が急激に増えた!!」


「なんだって?感知阻害かんちそがい?」


『能力【感知かんち】の索敵範囲を狭くさせ、認識をさせないための魔法です……どうやらその通りのようです、ご主人様……村の中から、反応が』


「なっ!!村からっ!?――クラウ姉さんマズイっ、村に入られた!」


「えっ!」


「逃げた魔術師たちですね……魔法を掛けたのは。じゃあ村に侵入したのは?」


「まだ居たんだよ。小回りが利くような兵士が」


 外壁を超え、門以外から侵入した。

 それが答えだ。

 感知阻害かんちそがいの魔法を範囲でかけ、ミオたち四人から認識され無くし、その上で侵入させる。それが聖女の……策だった。

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