8-68【王国を敵に回す一撃2】



◇王国を敵に回す一撃2◇


「レインおねえちゃんからはなれて!!」


「あ……んだ、このガキ」


「リアちゃん……!?だ、駄目逃げてぇ!あくっ……!」


 もう遅いと、リディオルフはレインを地面に強引に伏せさせる。


「お嬢ちゃん……大人の時間を邪魔したら駄目だろう?分かってんのか……ああ!?」


「……リア、おねえちゃんまもる。アイシアの願い……まもる!!」


 紫色に輝く瞳は、EYE’Sアイズの証。

 そしてその身は……竜の遺伝子で構成されている。


「わぁぁぁぁ!!」


 子供らしいと、そう言われればその通り。

 リアの叫びと共に行われたのは、両腕を振り回した突撃。

 ミオと戦った時の【竜人ドラグニア】とは思えない、おおよそ子供然とした攻撃だった。


「くっだらない!」


 ブン――


「……え?あれ」


「き、消えた?」


 正面にいたリディオルフが、一瞬で姿を消していた。

 リアはきょろきょろと周囲を見渡すが、どこにもいない。


「あれ、あれ?どこ……?」


 リアもレインも、何度も周囲を見渡す。

 魔力のないレインには分からないが、リアは丁寧に魔力の反応をも探している。

 しかし、“悪意のある魔力”先程までそれを追ってここまで来たと言うのに、それが完全になくなっていた。


 だが、一瞬。


「え……あっち??」


 リアが感じた魔力の反応は、南。

 リアはそちらを向く……が、レインは見てしまった。


「――リアちゃん!!」


 魔力の反応を追って南を向いたリアの背後に、リディオルフが出現したのを。


「え……――」


 ザッ――シュ……


「肩口から背中を……バッサリとねぇ!!」


 自ら捨てていた剣をいつの間にか拾い上げて、その剣でリアの背中を斬った。

 ぐらりと傾き、リアはレインの方に倒れ……なかった。


 ガッ!と踏ん張り、痛みに耐えて、涙目のまま……リディオルフを振り向く。


「んぅ……いた、くない!」


「マジか、頑丈な身体しやがって」


 確かに出血はしている。

 肩もぱっくりと割れていた。

 しかし、その皮膚には。


「――うろこ?」


 リアの皮膚には、竜鱗りゅうりんと呼ばれる硬い鱗があった。

 【竜人ドラグニア】は誰しもが持つ、最強の皮膚だ。

 普段は人間族と同じく人肌をしているが、このようにダメージを負ったり、魔力を籠める事で表れるのだ。


「ガキが……次は」


「ま、また!」


「きえた……!!」


 言葉の途中で消え去り、またしても魔力すらを別の所に出現させる。

 その度に、リアはご丁寧にそちらへ身体を向けてしまう。

 本能的に、魔力に反応してしまうのだ。危険だと。


「――こっちだよガキ!」


「え……あうっ!!」


 ドゴッ――と、背中を強打。

 リアは転がり、胸から泥に飛んで行く。


「リアちゃ――んぅっ……!」


「レインさんは黙ってようか、その口は……後でたぁっぷりと塞いであげますからねぇ!」


「あ、あぁ!!」


 首を掴まれ、レインは投げ飛ばされた。

 ドシャリと、同じく泥に突っ込む。


「さぁて、クソガキ……一方的な展開ってやつを、見せてやるよ!!」


「……うー!!リア、まけないっ!」


 立ち上がり、リアは腰を低くして構える。

 武器も何もないが……拳、その一撃に思いを込めて。

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