【混迷の村】編

8-59【必死の迎撃1】



◇必死の迎撃1◇


 村の北門で戦闘が開始され、半時(三十分)が経った。

 夜空はまだ深く、闇色に染まる景色に……閃光が走った。


「【孔雀貫線光ピーコックレイ】!!」


 ギャギャギャ――!!


 削り取るような音を立て、熱光線は強引に進もうとする兵士たち数名の頭部を消滅させた。

 グラグラと、兵士は頭部を無くす……だが。


「キモ……」


「やっぱりこれでも動くのね」


「かはは!腕と足をもいでも動くぜ!」


 ユキナリは魔物の腕のまま、捥ぎ取った腕を二人に見せつける。


「「見せないで!!」」


「……ちぇ~」


 投げ捨てる。

 しかし落ちた腕は。


「……」


 ビチビチと動く。まるで丘に上げられた魚のように。


「クラウさん、次陣が来ます!」


「了解……ん?少し違う?」


 倒してきた兵士たちの多くは、無言で進軍し、門を超える事だけを刷り込まれているようなイメージだったが。


「ですね。統率とうそつされています……」


 並ぶ兵士たちの他にも、後方に数人の兵の姿があった。

 さながら指示を出す指揮官のように。


「そんじゃああいつを狙うか?」


「……そんな暇があればね。数は多いわ」


 クラウは察した。

 先程までのゾンビ兵士は……尖兵、先行部隊だったのだと。

 あの兵士は少し違う。かもし出す雰囲気が、その佇まいが。


「来ますよ!先輩っ!」


「おい、まだ残りもいるからな!」


 追加の兵士たちは気配が違う。

 それは帝国組も感じている……戦闘は始めるが、まだ最初の兵も残っている。


「ならそっちは任せる。私が……新しいのをやるわ」


 クラウは一歩前に出る。

 当事者として、前線で戦うのは当然の事。

 しかしなにより、帝国の人間に任せてはいけないと言う、そんな直感から来た行動だ。


「行くわよっっ!!」


 クラウは飛翔し、戦力を確認。

 ユキナリとライネは最初の兵士の残りを迎撃しに入った。


「三百はいるわね、それにしっかりとこっちを見てる……やっぱりさっきの兵士とは違う。しっかりと私を敵と認識してる」


 問題は、戦闘能力だ。

 先程の兵士は、斬られても所構わず進軍しようとする……門の前に立たなければ剣すら構えないような、意思のない兵士だったが。

 新しい兵士は違う……既に剣を抜き放ち、足並みも揃っている。


「【貫線光レイ】」


 宣言する事も無く、クラウは光線を撃つ。

 しかし……


 バチィ――!


「……防がれた」


 当然の結果なのだが、先程まで戦っていた相手と比べてしまう。


「降下して……斬るっ!!」


 もしかしたら、精神ダメージが通じるかも知れない。

 そんな考えを持ちながら、クラウは【クラウソラス】を魔法剣モードに戻して突撃した。


「はぁぁぁっ!」


 ザン――!と、一人の兵士の右腕を薙いだ。

 ビクン!!と兵士はガクリと腕を垂れる。

 「行ける!」そう確信したクラウだったが、周りの兵士は。


「こ、後退した!?」


 今までの行動とは正反対。

 クラウの行動を見て、戦略を変えて来たのだ。

 よってクラウは思う……「コイツ等は、一筋縄ではいかないかもしれない」と。

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