8-52【天使と化物1】



◇天使と化物1◇


 クラウが戦闘を開始して数分。

 クラウの【光翼貫線光フェザー・レイ】は幾度となく兵士たちを穿うがつが、変わらず兵たちは起き上がり、しかばねの騎士となって進軍する。

 クラウは切り替え、光線を牽制に、【結晶剣クリスタル】で物理的に斬り伏せていた。


 ザシュッ――ザシュッ――ザンッ!!


「数が多いっ!!【貫線光レイ】っ!」


 以前よりも高速、以前よりも太くなった【貫線光レイ】で、自分を無視して進んだ兵士たちへ撃つ。

 並んでいた三人の頭部を貫通し、バタバタと倒れるが。


「やっぱり起きるっ!もう……気持ち悪いのよぉ!」


 ゾンビ映画のような光景に、クラウは剣を振るいながら叫んだ。

 どうせ会話を聞く人間もいないと理解しての、大きな独り言だった。


「【貫線光レイ】!【孔雀貫線光ピーコックレイ】!!【光線剣レイブレード】ぉぉぉ!!」


 光線、拡散光線、光線の剣。

 村に向おうとする無防備な兵士たちに、喰らわせる。


 ムクリ。ムクリ。ムクリ。


「……キリがないわね、やっぱり消滅させないと」


 そう思い。【光線剣レイブレード】の出力を上昇させて、高熱線にて攻撃しようと動こうとした瞬間。


「――なーるほど。こいつら消さねぇと死なないのか」


「……だ、誰!!」


 その吞気な声は頭上からだった。

 クラウは仰ぎ見る。するとそこには。


「――は?……フ、フドウくん!?なんでっ」


 蝙蝠こうもりの翼を羽ばたかせ、右腕を魔力のオーラで肥大化させたユキナリ・フドウが、クラウを見下ろしていた。


「よ、クラっち!久しぶりっ!」


 言いながら着地するが、その場所は王国兵の真上だった。


 ドッ――!グシャッッ!


「……ぅわぁ~……」

(あの腕、前見た時は【クラウソラス】のように、精神ダメージって感じだったのに)


 ユキナリは右腕……【グリフォンネイル】にて王国兵を潰した。

 前の時とは違う、圧倒的な威力で。


「――フ、フドウくん後ろっ!」


 笑顔を見せるユキナリの背後に、王国兵がズラリ。

 攻撃は大したことないが、流石にとクラウは声を上げたが。


 ズバッ――と、兵が両断された。真っ二つに。


「え」


「油断しないで先輩。背後ガラ空き」


「……」

(誰?先輩?冒険者学校……いや、私たちは一年。なら……帝国の)


「そんなに警戒しないでください。クラウ・スクルーズさん、私はライネ・ゾルタール。【帝国精鋭部隊・カルマ】所属の転生者です」


 その前髪に隠れた眼光を覗かせて、ライネはクラウに挨拶をする。


「帝国の人間が、どうしてここに?自慢じゃないけど、この村には一度も、国からの訪問者はいないわよ?」


 なんとも痛々しい自虐だった。

 クラウが言う訪問者とは、帝国を支配している人間たちの意だ。

 つまりは帝都【カリオンデルサ】の人間。


「それも後で――と!」


 ズバッ!


 今度は胴を両断。

 振り向きざまの一撃は、問答無用の即死レベル。


「動いてる。これでも死なないなんて……異常でしょ」


「だな。こりゃあやっぱり俺たちの失敗だわ」


「ちょ、いったい何のはな――くっ!」


 増え続ける王国兵。

 クラウも通り抜けようとした兵を……判断の間に合わない思考で、斬った。


「おぉ、やるじゃんおチビちゃん!」


「――誰がチビよ!!」


 咄嗟とっさに叫ぶ。


「かはは、まぁいいじゃん。さっさと数減らそうぜ、これなら意地でも向かってくる奴らと違って……考えないで済む」


 ギラリと、ユキナリの瞳が光った。

 それに合わせて、クラウも瞬間的に振り向く。

 ユキナリとライネに、背を預けるように。

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