8-47【防衛戦1】



◇防衛戦1◇


 北口の門の前で、私はその時を待った。

 そしてその時は直ぐに訪れる。

 多くの足音、白い鎧の騎士たちが……軍行してくる。


 その姿を確認し、私は大きな声で。


「――止まりなさい!!」


 私は……覚悟を決めた。

 命を奪う、その行為……殺し。


 前世では殺されて異世界、今世はきっと地獄ね。

 だけど、それでも守って見せる。

 少ない可能性の中に、私の善戦が含まれているのなら、変えて見せる。

 アイシアがた未来を、変えて見せる!!


「私は……村長ルドルフ・スクルーズの次女、クラウ!この村への侵入は許さない、今すぐに引き返しなさいっ!!」


 しかしぞろぞろと、白い鎧の騎士たちは止まらない。

 話を聞く耳すら持たない様に、進攻を止めないまま……抜剣した。


「……やっぱり聞かないのね!【リードンセルク王国】の人間って……もう!!」


 移住者もこの騎士たちも、話を聞くことすらしてくれない。

 耳も口もないんじゃないの!?


「そう来るとは思っていたけれど……【クラウソラス】!!」


 戦う気持ちすら見えない。

 声も発しない。動きも構えも素人……私も人の事は言えないけれど、それでも、この騎士たちの異様性は、肌で感じられるほどだった。


「「「「「……」」」」」


 殺気すら感じない。

 もしかして正規の騎士じゃない?


「止ま――らないわよねぇ!!」


 白い騎士は次々に剣を抜いていく。

 私を目掛けて、障害物を越えていく程度の勢いで、北の門を抜けようとする。


「はっ……!!」


 来るなら来なさいっ。

 全員心臓麻痺でもなんでも、やってやるわよ!!


 ザン――!!


 光の剣【クラウソラス】は、精神を斬る。魔力を斬る。

 肉体的外傷は、【結晶剣クリスタル】を使わなければ与えられないけれど、本気で殺しに行くのなら……心臓や頭を狙った光の剣で充分だ。


 ドサ……


「よし、次――え?」


 ムクリと、頭を叩き斬った騎士が立ち上がった。

 加減なんてしていない、脳を破壊するつもりの一撃を受けて。


「な、んで!!」


「……」


 じゃらりと剣を地面にこすりつけて、騎士は剣を振るう。


 どうして。なんで。おかしい。

 頭が混乱しそうだった。


「くっ……こっちも!」


 たったの数秒。

 それだけで、私は囲まれていた。


「――そっちには行かせないっ!!」


 私を無視して門を目指す騎士も当然いる。

 それは想定内……だけど、行かせない!!


「【孔雀貫線光ピーコックレイ】!!」


 剣先に膨らませた魔力を爆発させる。

 孔雀の尾のように、半月状に拡散する光のレーザー。

 接近する騎士たちの攻撃を避け、問に向かう騎士たち目掛けて撃つ。


 ドドドドド……すべて命中、狙いも完璧、頭部に心臓。

 これで……命を。


「……なっ……なんで!!」


 ムクリ。ムクリ。ムクリ。

 【孔雀貫線光ピーコックレイ】を頭や心臓に直撃されて、心臓麻痺や脳死状態になるはず……なのに、次々と騎士たちは立ち上がる。

 ゾンビのように、人形のように。

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