8-29【溝が深まる切っ掛け1】
◇溝が深まる切っ掛け1◇
それぞれの目的の為に、必死になって戦っている。
所属する王国の為ではなく、自分たちの利の為に戦う、【リューズ騎士団】と言う組織。
帝国の正規部隊に所属し、女神の名の下に任務を
この小規模な戦いが……やがて、
「――この!いい加減にしなさいよっっ!」
「うるせぇ!この前髪女っ!さっさと死にやがれ!!」
魔法が飛ぶ。
炎の魔法――【フレア・リング】。
輪っか状の小さなリングだが、チャクラムのように自由に操り、【リューズ騎士団】の団員レイモンド・コーサルは、緑の髪の少女……ライネ・ゾルタールに向けて悪態を飛ばす。
戦闘開始から数分、剣を数号重ねて、ライネは直ぐに気付く。
この男は、剣術に関しては自分よりも下だと。
だからこうして、斬り伏せるために
(くっ……離されてるっ)
心の中で
レイモンド・コーサルは、剣術こそそこそこだが、魔法に関してはライネよりも
上手く距離を測り、
「おらっ!【フレア・リング】!!」
この魔法は詠唱が非常に短く、口ずさむ程度で発動できてしまう。
しかし威力は極小だ……戦闘では正直言ってダメージには数えられない部類の。
だが炎は炎。衣服には着火するし、肌も多少は焦げる。
ライネは斬りばらう事も出来ただろうが、回避という選択を取った。
「当たらないっ!」
「くそがっ!」
(いいんだよ、当たらなくてもなぁ!)
ライネも回避後、速攻で立ち直し追いかける。
「早えなっ!
身体能力では完全に劣っている。
一歩の違い、されど一歩の違いだ。
大きな踏み出しは一気に間合いを詰める。
「今度こそぉぉぉっ!」
「――ヤベェッ!」
手に持つ剣――【アロンダイト】を斬り上げて、ライネは叫ぶ。
今度こそ当たる。そう確信した瞬間。
バチィィィィ――ジャジャジャジャッッ!!
ライネとコーサルのまさしく間。
その足もとに、雷光が走った。
「きゃっ……!」
「うおぁっ!」
咄嗟にライネが避け、コーサルは斬られなかった。
斬られた錯覚は覚えたが、胸をなでおろす。
「これ……まさかっ」
ライネは振り向く。
敵の前だと言うのに、稲妻を気にするように。
(あの方角……ゲイルの奴、まさか……っ!)
ゲイル・クルーソーは魔法が使えない。
魔力は持つが、初球の魔法を長く長く詠唱しなければ発動させられないほどの力しかない。
「ゲイルじゃねぇ……!くそがっ!!」
魔法に長けたコーサルには分かる。
この稲妻……空にまで伸びるこの雷光は、仲間に危機をもたらすものだと。
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