8-15【既に賽は投げられて3】



◇既にさいは投げられて3◇


 もう迷っている時間はない。

 侵攻はもう始まっているんだ……進軍を開始した王国軍は、無理矢理にでも街道を進むだろう、問題は。


「ニイフ陛下、横から失礼します」


 俺は立ち上がり、ジルさんの隣へ。

 ミーティアもついてきた、多分不安なんだ。


「どうぞ」


 ニイフ陛下は意味を汲み取り、【ルーマ】の映像をこちらへ向けてくれた。


「ケイト教官、お久しぶりです(多分)」


『――ミオ・スクルーズか、試験以来ね』


 やっぱり会ってた。


「はい、それで……話の続きなんですが。王国の軍隊の規模は分かりますか?正規軍と【リューズ騎士団】、それに聖女の軍と考えれば、一個小隊なわけないでしょうし」


 侵攻に使われる軍隊の規模か……分隊で数名、それが数個合わさり小隊だ。

 四~五十名の小隊が複数、【リューズ騎士団】は個人で動いている奴らが多かったが、実力で言えば普通の兵士よりは圧倒的に上だ。転生者もいるしな。


『歩兵を中心に、騎馬隊も複数……三ヶ月前の大馬車もあったわ』


 あのデカい馬車か。

 あれだけで百人いると考えてもいい。

 それに騎馬隊、魔法兵や騎士団……千を超えるぞ、これ。


「学生たちは、避難しているんですよね?」


『ああ、元【ギルド】の職員がやってくれている。それに、クレザース家の坊ちゃんが屋敷を貸してくれているよ』


「ロッド・クレザース先輩が!?」


『それに、魔物図書の御仁もだ……流石に、A級冒険者には簡単に手が出せないらしいな、軍人も』


「お、おお……グレンのオッサンまで」


 嬉しい誤算だ。しかもデカい。


『というわけで、【ステラダ】には援助は不要です、陛下。リードンセルク王家が何を考えているのか、それは変わらず不透明ですが……しかし帝国に喧嘩を売るとなると、王国に住んでいる同胞たちにも負担がかかります……戦争は避けなければ』


「そうね。報告ありがとう、ケイト」


「ありがとうございました、ケイト教官」


『――いいのよ。これが仕事なのですから……それよりも、早くこの騒動を解決して、二年生への進級試験をしないとね』


「その時の俺に、そんな余裕があればいいですけどね……」


『ふふっ、その為の力でしょう。頑張りなさい……エルフの救世主・・・くん』


「は?」


 プツンと、映像が切れた。

 俺はこの場に残されたエルフ三人を見る、ジト目で。


 サッ――

 サッ――

 サッ――


 ジルさんも陛下もエリリュアさんも目を逸らしやがった!

 なんだよエルフの救世主って!!聞いてませんけど!?


「ま、まぁいいです……後で追及しますけどねっ!」


 この家族三人、ケイト教官に何を言ったんだ。

 だけど、信頼はされている……んだよな?


「話は決まりだ……【ステラダ】に援護は不要、なら……指針の向くべき場所は」


「ミオの村、【豊穣の村アイズレーン】ね」


 最悪を防ぐために、村を出てから二度目の帰郷をする。

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