8-8【ステラダからの知らせ1】



◇ステラダからの知らせ1◇


 ミオ・スクルーズ。

 三ヶ月の停滞期間を終え……復活。


 そんな華々しいものではないが、俺が何も出来なかった虚無感を脱する事が出来たのは、ミーティアをはじめとする仲間たちのおかげだ。


 ミーティア・ネビュラグレイシャー。

 俺の大切な人であり、その身に【オリジン・オーブ】を宿す少女。

 青い【オリジン・オーブ】は水氷の属性を与え、ミーティアに氷や水を使う能力を授けた、能力的に言えば【水流操作】と【氷結操作】だろうか。

 その他にも、元から得意の弓技術に魔法……それらと合わせて、ミーティアは冒険者としてかなり成長したと思う。まぁ、本人は冒険者を目指している訳じゃないというのが、皮肉になってるけどな。


 ジルリーネ・ランドグリーズ。

 本名ジルリーネ・エレリア・リル・エルフィン。エルフ族の王女さまだ。

 今回の【治癒の孔雀石ヒーリング・マラカイト】による俺の回復はジルさんの発案であり、最大の功労者かも知れないな。

 ましてやエルフ族に長年伝えられる秘宝を使わせたんだから、感謝は一入ひとしおと言うもの。

 更には地下の冒険で病み上がり状態だったからな……本当にありがとうだ。


 ルーファウス・オル・コルセスカ。

 今俺たちが滞在するエルフの里がある国、【テスラアルモニア公国】出身の旅人であり、現在俺と契約という形で仲間になってくれている少年。

 俺よりも年上だが、低めの身長と童顔、どことなく中性的な雰囲気ふんいきを持つ彼は、黒一点である俺のオアシスになりつつある。

 最近は少し陰鬱な表情をする事が多々あり、それがエルフの里……つまり【パルマファルキオナ森林国】と【テスラアルモニア公国】の関係性を気にしていると見受けられるが、どこまで突っ込んで行っていいものか判断出来にくく、様子見に近いな。


 エリリュア・シュベルタール。

 ジルさんの従姉妹であり、そもそもエリリュアさんがジルさんを探さなければ、ジルさんも里に戻る覚悟を決めなかったかもしれん。

 まだ関係性は浅く、仲間と呼ぶには早い気もするが……良好な関係を築きたいとは思っているよ。




 と……まぁこんな感じだな。

 回復した俺は、現在まだ外に居る。

 あらすじ的な仲間紹介がてら、現状報告だ。


「さてと、そろそろ屋敷に戻りますかね」


 身体を伸ばしつつ、元通りになった事を喜ばしく思う。


「――ん?」


 うなずく面々と、何かを感じ取ったのか屋敷を覗くジルさん。


従姉上あねうえ?どうされました?」


「いや……この感じ、通信・・だな」


「つ、通信?」


 通信って、あの通信??

 電波は?


『――通信とは、様子を知らせる事であり、電子機器だけの言葉ではありません』


 ウィズに無知をツッコまれた。

 いや、それは知ってるんだって。ただ……この世界での連絡手段が何だって話だ。

 伝書鳩だとしたら、そんなものが飛んで来た気配はなかった。

 電話スマホやパソコンのような通信媒体が存在するなら、もっと電化製品がこの世界に潤っていてもいいだろ?

 魔力でも通信の真似事みたいな事が出来るとも聞いたけど……まさか今がまさにそれなのか?


「――ああ、【ルーマ】と言ってな。これくらいの大きさの……何と言ったらいいのか。そうだな、簡単に言えばアイテムだ」


 説明しにくそうに、ジルさんは両手でサッカーボールくらいの丸を作る。

 それくらいの大きさの、通信アイテムがあるってことなんだろうけど。


「じゃあ、ニイフ陛下に連絡が?」


 屋敷の中からその気配があったという事は、使用者は一人だもんな。


「……ああ。その通り……使えるのは、【ステラダ】にいるケイトからの連絡だ」


 ケイト……あれ?聞き覚えが。

 そんな俺のド忘れに反応したのは、ミーティアだった。


「――ケイト・ウェーデント教官ね。冒険者学校で、エルフ族の教官よ、ミオ」


「あ。あ~……?」


「分かってないでしょ」


 多分、俺は会ってないんじゃないかなぁ?

 そ、それよりも……そんな人から連絡が来たって事だろ?

 【ステラダ】から……一体何が??

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