8-9【ステラダからの知らせ2】



◇ステラダからの知らせ2◇


 直ぐに屋敷に戻る俺たち四人。

 【ステラダ】の【王立冒険者学校・クルセイダー】の教官、ケイト・ウェーデントさんからの連絡だと言うジルさんの言葉通り、屋敷の中ではニイフ陛下が、膝の上にサッカーボールサイズの何か・・を乗せて、けわしい表情を見せていた。


「あらあら、おかえりなさい皆。その様子だと、秘宝を上手く発動できたみたいねぇ」


「はい、母上。おかげさまでミオもこの通りです」


 俺の頭をポンポンと叩くジルさん。

 むずがゆい。


 一瞬で表情を柔らかいものに変え、ニイフ陛下は全員を見渡して。


「お疲れ様でしたね、皆……特にミオ・スクルーズ殿。回復されたようでなによりですわ」


「あ、いえ……その。ご、ご助力ありがとうございました」


 今は亡きエルフの国の女王陛下に優しく微笑ほほえまれ、緊張してしまう。

 何て言ったらいいか戸惑い、言い淀みながらも礼を言う。

 そんな俺の緊張を見透かしたように、ニイフ陛下は。


「うふふ。怪我も完治し、いよいようれいなく動けますね」


「それは……はい。とても、感謝しています。返し切れないんじゃないかと思うほどに」


「いいのさ。ミオはこれから、わたしたちを良くしてくれる事だ。だろう?」


「ま、まぁできる範囲内なら……?」


 ジルさんにしたり顔で言われ、俺は苦笑いで返す。

 俺に何をしろと?いや……できる事だったのなら、何をしてでも返したいけども。


「――それは重畳ちょうじょう。では早速ですが……一つ返していただきたく存じます」


 ニイフ陛下はそう言う。

 おいジルさん、誘導したね?


「はっはっは、そう睨むなミオよ……陛下、ケイトから連絡があったのでしょう。彼女はなんと?」


 切り替えながら、ジルさんは座る。

 ちょいちょいと手招きされて、俺やミーティアも座る。

 その後ろにはルーファウスとエリリュアさんが。

 いやエリリュアさんは前でしょ。


「――【ステラダ】からの定時連絡だと思い、軽い気持ちで受け取ったのが悔やまれます」


 それでさっきの険しい顔ですか。

 でも……定時連絡じゃない報告、って……なんだ?

 嫌な予感が、というか嫌な予感しかしない!


「それで、なんと?」


 空気が重くなった。

 それは肌で感じる程に、ひりつく緊張感とじっとりとした空気に触れて。

 その報告はニイフ陛下の口から――


「……【ステラダ】に、王国の軍隊が到着したそうです。それも、大量に」


「まさか……」

「そんなっ!」

「――もうか」


 ジルさん、ミーティア、俺の順に。


「ケイトは無事なのですね?彼女は里との連絡係……冒険者学校の教官でもありますが、今は封鎖されていますし……軍の目的は、いったい」


 ジルさんは腕組みして考える。

 しかし……考えられる候補は。


「――わ、私?」


「可能性はある。でもそれだけじゃない気がする」


 そう、軍という事は……【リューズ騎士団】が一枚噛んでいるはずだ。

 ミーティアの父、ダンドルフ・クロスヴァーデンの手中に収まる騎士団が。

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