8-6【回復の時6】



◇回復の時6◇


 ルーファウスとエリリュアさんが今度は前に出る。

 俺はミーティアを支えて後退し休ませ、ジルさんは二人の間に挟まる形で位置に着いた。


 【治癒の孔雀石ヒーリング・マラカイト】を中心に、右にルーファウス、左にエリリュアさん。

 その間にジルさんが立ち、残る最終段階は……調和だ。

 溜めこんだ魔力の残り二割、ルーファウスとエリリュアさんがその二割の魔力を注ぎ、ジルさんが最終調整する形なんだ。

 ミーティアが八割を埋めてくれた事で、完全にジルさんがサポートに回れる。

 これは嬉しい誤算であり、信じてよかったと思う。

 止められなければ、俺はきっとミーティアを邪魔していただろうからな。


「さぁ二人共、お嬢様の手順を見ていただろう……同じ様に始めてくれ。ただし、注ぎ込む魔力は最低限で構わない。そしてわたしが調整をする……三人の魔力を馴染ませ、一つの物として、“石”を発動させる……ミオも準備をしておけよ?」


「「「はい」」」


 各々が返事をし、準備は整った。

 合図と共に、ルーファウスとエリリュアさんが魔力を注ぐ。

 ミーティアの時とは打って変わって静寂……慎重に、ゆっくりとした波動だった。


「いいぞ、その調子だ……九十、九十二、九十四」


 ジルさんが“石”の魔力量らしき数値を口にする。

 もうすぐ、満タンだ。


「九十六……九十八、九十九――ストップだ!」


 ジルさんが二人を制止する。

 二人はゆっくりとかざした手を退けて、息を吐く。


「ふぅ」

「はぁ……」


 お疲れだ。

 たった少しの魔力でも、他の物に注ぐと言う作業は神経を使う。

 しかも自分だけじゃない複数人で、ごちゃまぜにならないように注意しながらだ。


「お疲れ二人共、サンクスッ!」


 俺は感謝と親しみを込めて、笑顔で言葉を使う。

 二人も笑顔を返してくれた。


「よし、【治癒の孔雀石ヒーリング・マラカイト】の貯蔵ちょぞう魔力は充分だ。前時代程の力は発揮できないだろうが……これなら、文献ぶんけん通りの効能を使えるはずだ!」


 なら、俺はしっかりそれを受けないとな。

 俺は立ち上がり、前へ。


「なんて暖かい光なんだ……」


 クラウ姉さんが【クラウソラス】の力で治癒するレベルじゃない。

 あれはあれで凄いし貴重なのは理解できるが、【治癒の孔雀石これ】は別格だと分からせられる。


「時間は少ないぞミオ、傷を中心に……一気に回復させるつもりで発動させるんだ、そうすれば“石”がおのずとやってくれるはずだ」


 俺はコクリとうなずき、両手を【治癒の孔雀石ヒーリング・マラカイト】に伸ばす。

 発動は一瞬、後は勝手にやってくれる……それなら。


「頼む、“石”よ……傷を、癒してくれっ!」


 絶対的な破壊の力によって魔力の回路が傷付き、思う様に動けなくなって三ヶ月と少し。

 皆の献身的なサポートと、思いやってくれる心意気のおかげで……俺は、復活する――!!

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