8-5【回復の時5】



◇回復の時5◇


 周囲を光で包むその魔力の波長は、ミーティアのものであり、俺のものでもあると言う確信があった。

 暖かい光は里の周辺まで広がり、少しだが……身体にも影響を感じた。


「腕が……」


 何のうれいも無く、動かせる。

 今まで少し動いただけで痛みを感じた、【破壊はかい】による浸食。

 魔力が流せない回路の不順……それが一瞬ながら解消された。


「この光だけで??」


 マジですげぇ。


「――うっ……この“石”、最大魔力量が凄い……私の魔力だけじゃあっ」


 ミーティアが顔色を悪くする。

 それでも健気に魔力を注いでくれている。


「ティア、無理しないでくれよっ!?」


 倒れたら元も子もないだろ。

 ミーティアに、無理だけはさせられないっ。


 だが、そんな俺の思いはジルさんに止められる。


「――邪魔するなミオ。お嬢様が無理だと言うまで……止めるのは無しだ」


「だ、だけどっ」


「これはお前を治癒する為の行為だ……魔力を多量に使用することは覚悟の上だ。その思いを無碍むげにするのか?」


「……それは」


 俺は苦々しい顔でジルさんとミーティアを交互に見る。

 分かってはいるが……ミーティアに何かあったら。


「信じろ、ミーティアお嬢様を。お前は最近、少し過保護になっているぞ。お嬢様を大切に思ってくれるのは嬉しいがな、それでは成長は見込めない……それくらい理解しておろうに」


「……」


 ぐうの音も出ない。

 正論だし、しかも恥ずかしい事をサラッと言ってくれちゃって。


「分かりましたよ。見守ります……」


 過保護になっていたのも事実なんだろう。

 きっと、俺が何不自由なく動けていたら……地下でもミーティアの戦いに水を差していた可能性が高い。

 守ると言う名の、枷になっていたんだ。


「それでいい。お嬢様が歩む道にお前が居るなら……きっと平気だ。信じられる」


「ジルさん……」




 数分……ミーティアが魔力を注ぎ始めて数分が経った。

 とうとうミーティアの魔力が限界点へ到達……ミーティアは膝から崩れた。


「――かっ……はぁ……はぁ……はっ」


「ティアっ、平気か?」


「え、ええ……ごめんなさい、これが限界で」


「いや、よくやったよ」


 自分の限界を見極めての撤退。いい判断だ。


「その通りですお嬢様、“石”の魔力も……うん、八割にも満ちている。結果としても最上以上……よく頑張りましたね、あとはお任せを。ルーファウス、エリリュア」


「「はい」」


 ジルさんに褒められて、ミーティアは嬉しそうに頬を緩める。

 予定が七割の所を更に一割上乗せしたんだ、上出来すぎるさ。


「頼んだ、ルーファウス、エリリュアさん」


 残りは二割。

 魔力を注ぎ……そこからが問題点。

 混じり合うのか。それぞれの魔力が。

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