8-2【回復の時2】



◇回復の時2◇


 外に出た俺たち……俺とルーファウス、ミーティアとジルさんな。

 エリリュアさんは片付け、ニイフ陛下は休憩だそうだ。


「【治癒の孔雀石ヒーリング・マラカイト】……どうやって使うんです?」


 緑色の球体状の石。

 大きさは手のひらに収まるほど……宝石と考えたらデカいな。


「古文書には、石関連の魔法の道具はその身に装着する事が多かったそうだ、と記してあったが、それには適性が必要らしい」


「適正か。もし素質が無かったら……」


「いや、だからそこまではしない」


 俺の不安は、ジルさんの一言で否定される。

 そこまではしない……それはつまり、他にも方法があると?


「普段から、魔法の道具を使うのにはどうする?はいお嬢様っ!」


「――え、私!?」


 ビシィ!と手を差し向け、ミーティアに答えを述べさせるジルさん。

 指差さない辺り、ジルさんの人柄だな。


「はい、お答えください」


「う、うん。魔法の道具は……基本的に魔力を注ぐことで発動するわね、一般に使用される家庭道具も、冒険者向けの戦闘道具も。だから魔力が重要……だけど、【治癒の孔雀石これ】も、そうなのかしら」


「と、言うと?」


 ミーティアは考え込むように、ジルさんが持つ球体を見る。

 その疑問を、ルーファウスも感じていたようだ。


「う~ん、これ……普通の魔法道具ではないわよね?何というかほら、あんな地下深くに安置されていて、精霊の力を宿しているのでしょう?」


「まぁ普通に考えれば、特別スペシャル……だよな」


 ジルさんの手元を見るミーティアの後ろ姿を見る俺。

 髪の毛がしな垂れて、服の背部にちょろっと入り込んでる……

 ミーティアの服、エルフ仕様と言うか、借り物だから何だか見慣れないけど、背中がら空きでセクシーだな。


「ミオくん?」


「――何でもない。続けよう」


 こういう視線は女性側が気付くもんだろう?

 なんでルーファウスに気付かれるんだ。


「それこそ建国以前の歴史では、“石”が主となった戦争があったと聞く……【治癒の孔雀石これ】のようにな」


「貴重なもの、って事なんですね。あれでも、【ステラダ】のいろんな店では宝石なんかのアイテムは安かったけど……」


 地球じゃ考えられない格安の値段で宝石が売ってるんだもんな。

 しかもよく盗まれるとか。


「価値を知らないからだろう。石そのものの価値ではなく……“力”的な意味で。それだけ使いこなせる存在がいないという事さ、さっき言ったように、適性があるからな」


 貴重は貴重だが、使えない人間からすればただの石……しかも宝石的な価値は皆無か。そうなるとやっぱり、店で盗んでる奴は転生者だろうな。


「それじゃあ余計に、使えるんですか?それ」


「「……」」


 まさしくその通りな俺の言葉に、ミーティアとルーファウスが無言でジルさんを見る。しかしジルさんは。


「平気だ。何のために危険を冒してまで、この幻晶げんしょうを借り受けに行ったと思っている……単にお嬢様の修行の為ではないんだぞ?」


 ふふんと笑みを見せるジルさんは、やけに自信があるようだ。

 それじゃあ見せて貰おうかね、ジルさんの言う絶対的な自信……その方法をさ。

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