7-107.5【選択された未来2】
※アイシアが語った事を思い起こす形となっている為、セリフがありません。
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◇選択された未来2◇
アイシアが語ったその話は、遥か大昔の……今、この世界に存在する誰もが知る事のない、一人の女神の始まりの話だった。
初代アイズレーン。
アイシアが言うには、彼女は普通の少女だったらしい。
幼馴染の少年に恋をし、ライバルたちと競い合う、そんな普通の少女。
いったい何千年前の話なのだろう。それは、この世界を決定づけた歴史だった。
その発端となった一つの戦争、その戦いの更にあと……戦争が終わり、少年が王となって、数々の種族を招き、今の世界の基盤を作った。
王である少年の
初代アイズレーンも、きっとその一人であったのだろう。
精霊、機人、天使に悪魔、魔王に勇者、エルフに獣人、異世界からのお客様たち。
数いるヒロインの中で、彼女とその姉だけが普通の人間……つまり、寿命のある身体だったのだ。
精霊女王である一人は、この世界に自分の分身である精霊たちを生み出した。
これがこの世界に存在する、精霊の始まり。
今や見掛ける事すら珍しい、精霊だ。
天使の女性は、言わずもがな私たち天族の祖。
きっと悪魔の女性も、魔族の祖なのだろう。
それ程までに、この世界の歴史の始まりだったのね。
そしてアイズレーンは願ってしまったのだ、ずっと彼と一緒に居たいと。
自分だけが年齢を重ね、老いて、死んでゆく……それが悲しかったのだとアイシアは言う。
それが起点となり、アイズレーンは異世界の神を呼んでしまった……それが、アイズレーンを作り出した、主神だと。
女神と成ったアイズレーンは、永遠の命を得たと思った。
しかし結果は、神の代わりに事を成す、
今のアイシアと同じだと、私は思った。
歴史は繰り返す……そんな言葉があるように、アイシアは初代アイズレーンを
幼馴染の少年に恋をし、ライバルと競い、そして……神になろうと。
何故、アイシアはそれを知っているのか。
その紫色の瞳に映る私の顔色は、優れていないだろう。
語る
いったい誰なのか、その記憶を呼び起こしているのは……もしかして、初代アイズレーンなのだろうか。
アイズレーンは、約千年のペースで生まれ変わり、現在のアイズが当代だ。
彼女は変えようとしている。アイズレーン……延いては神の存在のあり方を。
自分の寿命があと少しと知って、それでも抗って、神を討とうとしている。
神を討つ。その為に、ミオや私の力が必要なのだと。
ミオに、神を殺せと言うのだ……でも、それは……自分をも殺す事だ。
アイズはきっと、それを覚悟で成そうとしているのだろう。
私にそれを助ける事など、出来るのだろうか。
そしてミオは、アイシアは……どうなるというの?
まるで自分が蚊帳の外に居るかのような空気を最後に、【女神アイズレーン】の歴史を語ったアイシアは……静かに眠るように、気を失ったのだった。
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