7-107【VSエルフの守護者7】
◇VSエルフの守護者7◇
お嬢様が、あんなにも頼りがいのある女の子になるだなんて、近々で思う事はなかっただろう。
全身が凍り始め、動きを鈍くするドラゴンが憎たらしく見上げる少女は、落下をしながらこちらを見る。
その視線は、全幅の信頼が寄せられていると気付ける。
だから答えねば……わたしは、お嬢様が誇れる従者であると、エルフの王女として、未来を
「……集え、風の精……燃ゆる炎光のように巻き起こり、加速する稲妻のように炸裂する衝撃を……集え、集え、集え!!」
ミーティアお嬢様は全身全霊で戦った。
その氷の涙は、ドラゴンをも凍らせる程の魔力。
それ程の力を使えば、誰であろうとこれ以上は戦えまい。
ならばこれで決めるしかない、終わらせるのだ……わたしが!
交差する二本の剣の先に、わたしの使える二種の魔力を流す。
一つは風の魔力、もう一つは炎の魔力だ。
「燃え盛れ、魔炎の
わたしが最後の一節を唱え、魔法の名を唱えようとした瞬間だった。
グオォォッウ!!
「――なっ」
ドラゴンが、まだギリギリ動く尾を……私に向けて突撃させたのだ。
今までの無視が嘘のように。動けない怒りをぶつけるように。
(……ダメだ、間に合わないっ!)
詠唱の最後、後は発動するだけだった。
無防備なわたしに、防ぐ
これで全て無駄になった……お嬢様の攻撃も、【精霊エルミナ】の
「――ジルーーーーーーー!!」
その叫び声と共に、わたしの眼前に氷の柱が出現した。
ドラゴンの尾は、その氷柱に直撃し、突き刺さる。
「お嬢様……っ」
わたしとドラゴンの尾の間に割って入ったのは……氷の弓だった。
途中で弓は氷柱へと変貌し、わたしを守ってくれたのだった。
この隙を逃す訳にはいかない。
氷柱は砕け始める、時間は一瞬だけだ。
わたしは氷柱が砕ける瞬間に……魔法を発動させた。
「――【
風が巻き起こす、炎を加速させる。
火種は風によって育ち、大きく大きく
「その巨体、更にはお嬢様の氷で動けまい!今までわたしを無視したつけを払ってもらうぞっ!!いけぇぇぇぇ!!」
ギュン――と加速して、わたしの二本の剣を焼け焦げさせながら、獄炎の魔法はドラゴンの背に向かって突撃した。
威力は折り紙付きだ。わたしが何の為に、この数十年詠唱をしない魔法しか使っていないか、威力が高すぎるからだ。
グオッ……
動こうとしたドラゴンだが、ほぼ全身を凍り付けにされて鈍く、微動する事しかなかった。
そして、当初の目的通り……右翼に直撃する。
凍り付き、
ドゴォォォォ……――ンッ……!!
「ぐっ……」
「きゃっ」
爆発が起こった。
氷と炎の温度差に加えて、わたしとお嬢様の魔力が合わさった相乗効果で、部屋一帯を熱風が埋め尽くしたのだ。
そうなれば、無防備だったわたしは当然吹き飛ぶし……落下途中だったお嬢様も、吹き飛ぶ。
「――がはっ!」
壁に激突し、魔力も無くなり、わたしは気を失う。
きっとお嬢様も。
グオオオオゥ……ガオォォン……
さて、目を覚ました時……どうなっているかな。
ドラゴンがまだ健在なら、そのまま永遠に目を覚まさないバッドエンド。
それともドラゴンが朽ちて、二人で笑い合える展開か……早く目を覚ます事だけを祈るとしようか。
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