7-108【里の上と下】
◇里の上と下◇
外が夕闇を
谷底に近いこのエルフの里は、そもそもが暗がりである。
それでも、神秘的なまでの木々は明るさを吸収し、よく日差しを通して、夜が近付いてもまだその明るさを保っていた。
「……遅い。大丈夫なんだろうなぁ……」
腕組みをしながら指でトントンとリズムを……いや、イライラを隠す。
時間的には、あっという間にもう八時間だ。
ミーティアとジルさんが【リヨール
俺とルーファウスは一応、エリリュアさんにこの里を案内はしてもらっていたが、ハッキリ言って内容なんてこれっぽちも入ってないぞ。
「――ミオくん、中に入りませんか?食事の準備をしてくれていますよ?」
「ん、ああ……だよな。ここで待ってても変わんないか」
「はい、そうですよ。折角今日も女王陛下とエリリュアさんが手料理を振舞ってくれるんですし、頂かないと失礼ですから」
「……分かってる」
それが不安でもあるけどな。
昨日の料理覚えてんだろ?
だけどまぁ、ジルさんの母親でもある女王陛下がそこまでの余裕を見せてるんだ。俺があたふたしてても仕方が無いよな。
ルーファウスの言葉を飲み込んで、自分の心配性に
……無事に帰って来てくれよ、二人共。
◇
一方で、その里の深く……【リヨール
「……」
「……」
ぴちゃん……と、
「……ん」
起き上がったのは、ミーティアだった。
「私、無事だったみたい……」
『――そのようです。魔力切れで気を失っていましたね』
「そっか……いたた」
自分が倒れていたのは、氷のベッドとも言えるクッションだった。
魔力で出来たそれは、落下した自分を
こんなもの、凍えてしまいそうなものだが、やはりミーティアには平気なようだ。
「魔力が切れたんだ……ジルは、ドラゴンは?」
『反応はありません。魔力の感知も出来ません』
「ウィズは、まだ平気?」
魔力が切れたという事は、ミーティアの中に存在するミオの魔力も無くなっている可能性が高い。そうなれば、ウィズとの会話も出来なくなるはずだが。
『今のところは平気なようですね……理由は不明ですが』
「謎ね……よっと」
氷の花のベッドから降り、霧が充満する視界を細めて見る。
音がない、気配も……ない。
「……」
『ドラゴンの反応は前方に。ですが、動く気配はありません』
「なら叫んでも――って、えっ!?」
叫んでも平気だろうかと、ミーティアは一瞬だけ思案した。
しかし自分の目の前に在る、その巨大なオブジェクトに気付いた。
「――こ、これ……まさか、ドラゴン?」
『――はい。凍っていますね。
「ここまで?」
手で触れるそれは、まるで氷山だ。
しかし、その氷山と化したドラゴンは一切動かない。
氷の壁に阻まれているようなそんな気分を抱えながら、ミーティアはゆっくりと周囲を探り始める。
先ずは、このドラゴンにトドメを放ったジルリーネだ。
「……ジル、どこ?」
ようやく霧が晴れてくる。
ミーティアが気が付いたことで、霧散していた魔力が収束を始めたのだ。
『居ました。左方……倒れています』
「――ジルっ!!」
身体に戻って来る霧の魔力を無視して、ミーティアは駆け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます