7-95【リヨール響窟の戦い2】



◇リヨール響窟きょうくつの戦い2◇


 某有名な合体スライムがごとく、数十体の【シャドーゲル】が集合して合わさった。まさしく合体である。

 キング……とは、あえて言わないが、それでもその巨体は、狭い洞窟内では圧倒的に動きにくく、そして邪魔だ。


「道を塞がれてるな。お嬢様っ!倒さねば先には進めませんよっ!!」


「そうみたいねっ!――弓よっっ!」


 構えた氷の弓から冷気。

 凍弓は魔力で弦を作り、弦を持った右手からは魔力が矢を形作る。


「――ふっ」


 られた魔力矢は空中で分散し、巨大な【シャドーゲル】へと飛翔して、ぜる。

 氷のつぶて、その無数の氷片は【シャドーゲル】へと突き刺さる。しかし。


「これは……!まさか、次々に身体の構造を入れ替えて?」


「凍った箇所が直ぐに、元通りになってる!」


 キュルル!キュルキュル!!


「来ますよっ!」


「――分かってる!二人・・で言わないで!!」


 ミーティアは飛び跳ねて、【シャドーゲル】が体内から出した黒い触手を回避する。


「気持ち悪い……」


「お、お嬢様……それは!」


 飛び跳ねたミーティアは、天井てんじょうに着地していた。

 そして、そのまま停止した。

 それを見上げるジルリーネは気付く……右足が凍って、張り付いているのだと。


「――【青い星ブルースター】っ!!」


 天井てんじょうに逆さ吊りの状態で、ミーティアは魔法を放つ。

 貫通力高めの、魔法の一撃だ。

 得意魔法であり、弓術の一種でもあるが、今のミーティアから放たれるのは氷を付加している。威力も段違いだ。


 ドギャッッ――!!ギャギャギャギャギャギャ!!


「防いだっ!?」


 螺旋らせんのように回る【青い星ブルースター】は、氷をまき散らして【シャドーゲル】に襲い掛かったが、【シャドーゲル】は触手を何重にも折り重ねて大きな盾を作っていた。

 なんとも小賢こざかしいものだと、ジルリーネは内心で呟く。

 しかし、そんな攻防も徐々に。


 ギャギャ……ギャ……ギャ……


 動きを鈍くさせ、【シャドーゲル】はゆっくりと凍り付いてゆく。


流石さすがに魔力量ではお嬢様が上手か、しかし……お嬢様!全部凍らせては、この先に進めませんよ!!」


「――あ!!ストーップ!」


 通路は合体した【シャドーゲル】が塞いでいる。

 その巨体を凍らせては、進行が中断するのだ。


 ミーティアは魔力を途切れさせて、【青い星ブルースター】を消滅させる。

 【シャドーゲル】はもう完全に動きを鈍くさせ、まるでスロー再生のように緩やかな動きしか見せない。


「どうしよう……え、爆発?――クラッシュ、なに?」


 一人で呟くミーティアに、ジルリーネは隣にやって来て。


「こうするのです。お手を」


「え、はい……」


 ジルリーネはミーティアの手を取り、魔力の流れを実践する。

 こうするのだと、理解しろと。


「分かったわ……やってみるっ」


 ミーティアは右手を【シャドーゲル】へとかざして、魔力を籠める。

 目標は、【シャドーゲル】の中心点。コアがあるであろうその場所だ。


「――壊れてっ」


 撃ち込んだ魔力の矢は、既に凍結として体内に侵入している。

 そこから魔力を爆破させるという事だ。


 ピシッ――ピキピキ……


 ガッシャーーーーン……と、【シャドーゲル】は無残に砕けた。

 まだ完全には凍っていなかった箇所も、砕けた氷の破片から魔力で移り、凍って行くのだった。

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