7-82【エルフの女王3】



◇エルフの女王3◇


 エルフの女王様からの、唐突な「恋人いますか?」宣言に、かく言う新人カップルとなった俺とミーティアは二人でおどろく。


「こ、恋人っ!?」


「ええ、恋人です。意中の方でもよろしいですが」


「――あ、あの……わ、私!」


 ミーティアが戸惑いながらも名乗り出ようとするが、ここは俺が言わないと立つ瀬がない。聞かれてるのは俺なんだし、ミーティアに言わせたら情けない。


「分かってるっ!いませんだなんて言わないから!!」


 ここで俺が「恋人なんていませんフリーです」なんて答えて見ろ、ミーティアの信頼感なんて駄々下がりだ。


 いやしかしだな、恋人とは言え、未だにそれらしい事なんて……キ、キスくらいしか……しかもあれは勢いというか、情緒も雰囲気もへったくれもない病室でだし。


「存じていますよ。貴女あなたは……ミーティアさんですね、ダンドルフの娘さんの」


「え……あ!す、すみません……申し遅れました、私は――」


「いいえ、いいのですよ。貴女あなたの事……当然聞き及んでいますから」


 それはやはり、エリリュアさんから聞いたのか……それとも。


「えっと……申し訳ありません女王陛下、俺……じゃなくて私は……こちらのミーティアさんとお付き合いをさせて頂いています。恋人がいるかとの問いには、そう答えさせて頂きます」


「そうみたいですね、実に初々ういういしい……大昔を思い出します」


 大昔って……自分の恋路を思い出してって事か?

 ジルさんが二百歳を超えているんだとすると……え~っと。


「――邪推じゃすいはするものではありませんよ?ミオ・スクルーズ殿」


「す……すみません!」


 ヤバい!反射的に女王様の年齢を考えてしまった!

 いいかげん異世界に慣れろ俺!エルフはこう言うものだ!!


「まぁいいでしょう……しかし意中の女性がいますか、残念です」


 腕を組んで頬に手を当て、ため息をく女王様。

 心底残念そうなんだが……どうして。


「あの、失礼ですが……どうしてミオの、ミオくんの交際相手の有無を?」


 ミーティアが聞く。

 その通りだよ、どうしてエルフの女王様に、俺の女性遍歴を尋ねられなきゃならないんだ……それ以前に、そのページにはミーティアの名前しか載ってないから!


「はい?……それは勿論、我が娘……ジルリーネちゃんのお相手を探す為ですけど?」


「「――は!はぃぃい!?」」

「うわぁ……」


 こらルーファウス!うわぁとかドン引きするんじゃない!

 他人事ひとごとだと思いやがって!


「そうおどろく事ではありません。あの子ももういい年です、流石に未だに男性とのお付き合いが無いとなると……母は心配で心配で」


 ジルさん……なんて悲しい。


「――母上ぇぇぇぇぇ!!よ、余計なことをっ!!」


 台所から、エプロンを着けたジルさんが駆け付けて来た。

 聞こえてたんだな……今のやり取り。


 それにしてもジルさん顔真っ赤!

 ジルさんじゃなくても赤面案件だが、もしかして女王様、この為にジルさんを呼び戻したのか?

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