7-81【エルフの女王2】



◇エルフの女王2◇


 囲炉裏いろりを囲むようにして、ニイフ様を中心に火を眺める。

 陛下の左隣には、プルプルと震える生まれたての小鹿のようなジルさん。

 その隣からは順に、ミーティア、俺、ルーファウス……エリリュアさんとニュウさんだ。

 正方形の囲炉裏いろりは一幅が二人分あり、結構広い。


「……」


 それにしても、さっきの女王様の空気……ヤバかったな。

 笑顔なのに、人を殺せそうな雰囲気ふんいきだった。

 笑顔で人を処すヤバい奴って感じではなく、何と言うのか……空気感?

 まるで強キャラが実力の一端を現したみたいな……糸目のキャラが開眼したようなさ、あるだろ?


「エリリュアちゃん、この鍋……もういいかしら?」


「まだじゃないでしょうか……」


 なんで持って来たエリリュアさんが分からないんだよ。


「中身は何なんですか?」


「……えっと、アカバクショウダケです」


 なにその毒キノコ感。

 赤爆笑茸?名前だけなら完全に毒だけど。


「――毒ではないか!!」


「いややっぱりかよ!!」


「「え!」」


 おどろくニイフ様とエリリュアさん。

 ちょっとちょっと……あなたたちは普段何食べてるんですか!


「はぁ……わたしが準備する、台所を借りるぞエリ」


「あ、はい!従姉上あねうえ!」


 鍋を持ち、奥へ向かう二人。

 あれ?ちょっと待ちません?残されるの俺たちなんですけど。


「いってしまいましたねぇ……食べられるのに」


 指を口元に這わせ、残念そうにニイフ様は言う。

 そんな姿に俺は……つい。


「いや、無理ですって……」


「……」


「――あ!す、すみません!」


 やべぇ……いつものノリでツッコんでしまった。

 存在しなくなった国とは言え、女王様に対して失礼過ぎた。


「いいえ、いいのですよ……ミオ・スクルーズ殿」


 エリリュアさんに俺の事を聞いたのか?一目で分かるほど事細かに?


「ま、まだ自己紹介してないですけど……」


 どうして俺だと分かったんだ?

 男はもう一人、ルーファウスがいる……俺をミオ・スクルーズだと、迷いもなく言えるのは何故だ?


「あら、そうでしたか?うふふ」


 えー……答えないのかよ……

 笑って誤魔化ごまかした?なんで?


『――魔力の流れを感知した可能性がありますが……今のご主人様は不規則かつ、非常に複雑で流れが読みにくくなっているはずです。その複雑な流れを完璧に読み取らなければ、個人を特定するまではいかないのですが』


 それを読んだってのか?この人が。


「まぁ、ミオ・スクルーズなんですけども」


「でしょう?ならお気になさらず……所で、ご家族は?」


「え?……両親と、姉が二人……妹が一人ですけど」


「ふむ……長男ですか。それは好都合」


「はい?」


 何がでしょう。


「恋人は?」


「「え!?」」


 おどろいたのは俺とミーティア。

 俺は質問の意図が理解できず、ミーティアは……どうしたミーティア、顔が白いぞ!?

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