7-83【エルフの女王4】



◇エルフの女王4◇


 ジルさんの嫁ぎ先を探してるのか?この人は……でも、それはおかしい。

 もしも俺をその候補の一人としているのなら、そもそもの前提としておかしいんだ。


 俺は天族に属する種族……天上人。

 つまり、もしもジルさんを嫁に貰った所で、生まれてくる子供はハーフ。

 そんな事を、エルフ族のトップである人が言うか?

 それとも……意外と柔らかい考えというか、ハーフに偏見を持たない人なのか?


「何をお考えですか?」


「……いえ、ジルリーネさんのお相手を探すのなら、エルフの――同族の方がいいのではと思いまして」


「……」


 俺の言葉に女王様は反応しない。

 うんともすんとも言わず、いきどおるジルさんを微笑ほほえましい目で見ていた。


「母上っ!!わたしの相手はわたしが決めますと、何十年も前から言っているでしょう!!しかも……ミ、ミミミ……ミオとなど!」


 その言い方は俺が傷つくんですがジルさん。

 多分、ミーティアがいるのに……という意味合いだろうけどさ。


「ごもっともです。殿方はエルフが最重要……ですが、母は娘の気持ちが一番だと考えます」


「それは……つまり?」


「母上っ!」


「見たところ、娘はミオ殿をたいそうお気に召している様子……今までの人生でも、見た事の無い様な顔をしています」


「聞いていますか母上っ!!」


 ジルさんをガン無視して、女王様はつらつらと言葉を並べる。

 あくまでもジルさんの意思だって言いたいのか、いや……まぁ、嫌われてはないとは思うけどさ、俺にはそういう気は。


「は、はぁーい!新しいお鍋をお持ちしました!!ささ、食べましょう!」


 焦ったようなエリリュアさんが、両手に鍋を持って台所から戻って来た。

 鍋が増えたんだが……中身大丈夫でしょうね。


「そうしましょう。ほらジルリーネちゃん、座りなさい」


「母上……」


 視線でうながす。

 それだけでも、従わないとヤバいと言う空気感……ジルさんも黙って座った。


「……オ、オイシソー」


 ミーティアが光のない瞳で、鍋を見て棒読みで言う。

 俺とミーティアの話だと思ったら、女王とジルさんの問題にすり替わってるもんな。これじゃあ、俺がミーティアと恋人だろうがなかろうが、まるで関係ないとでも言っているように取れる。


「ミオくん……」


「ん」


 今まで会話に入らず、存在感を消していたルーファウスが小声で。


「――以前の【パルマファルキオナ森林国】は……重婚可ですよ」


「……」


 と、とんでもない事を……言い出しやがった。

 つまり、そのルールにのっとっている女王は……この場所は【パルマファルキオナ森林国】だと、娘を貰ってくれと……そう言っているのか。

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